2026-03-10

あさって党奇譚 ~ポンコツたちの文明開化~

 文明開化の煙が東京の空をまだらに染めていた、明治の初め。わたし、チ~サは「にっぽんぽん・あさっての党」の薄暗い屯所(とんしょ)で、湯呑みを拭いていた。今日も今日とて、お偉いさん方の奇想天外な会合が始まるのだ。

「ええか、チ~サ!よう聞いとけ!これが新しい日本の夜明けや!」

部屋の中央で仁王立ちするは、我らが代表。ちょんまげの代わりに胡散臭い山高帽をかぶり、金勘定の算盤(そろばん)だけは常に懐に忍ばせている。

「まず第一に!異国との『たぶんかけふせい』は絶対に成功せん!歴史が証明しとる!ワシの知る限り、成功した国は一つもないんや!」

わたしは思わず「多文化共生、では…?」と呟きかけたが、声にはならなかった。代表の迫力に、いつも言葉を飲み込んでしまう。

「見た!アタシそれ見た!」

すかさず声を上げたのはジム総長。扇子をパタパタさせながら、知ったかぶりの極みみたいな顔で続ける。

「異国の者たちが手を取り合って崖から落ちていくのを、異国の瓦版で見たわ!結果として彼らの行動で利しているのは、崖の下で口を開けていた熊ね!」

…そんな瓦版があるわけないのに。

「その通りじゃ!」

福井訛りの大声が響く。パイプユニッシュ様だ。胸を張り、なぜか詰まったままの煙管(きせる)をふかしながら豪語する。

「拙者が繋いでおる亜米利加(アメリカ)の『とらんぷ』なる大統領からの密書にもそう書かれとる!『多文化共生ダメ、絶対』とな!党勢拡大は間違いない!」

(パイプ、詰まってますよ…)なんて、とても言えない。

「ワシの言う通りやろ!」代表は得意げに鼻を鳴らす。「そもそも亜米利加なんちゅう国は、欧州の人間しかおらんのやからな!ワシは詳しいんや!」

「代表のお言葉こそが歴史の真実です!」

突如、代表の足元からぬっと現れたのは、カレーの本質🍛さん。瞳を潤ませながら、両手で合掌している。

「教科書に書かれている奴隷船だの、清国からの移民だの、そんなものは全部、薩長の捏造なんです!ボクは代表と共に、歴史の嘘と戦います!」

このエクストリームな擁護に代表はご満悦だったが、その時、障子がガラッと開いた。

ウキーッ!

猿が一匹、部屋に飛び込んできた。ま猿🐒くんだ。

「ウキー!亜米利加は猿が建国したんだキーッ!デコバカ!」

そう叫ぶなり、ま猿🐒くんは一目散に駆け去っていった。すべてがデマなのに、勢いだけは真実のようだ。

続いて、顔を真っ赤にしたピライ様が顔を出し、

「うるさい!静かにしろ!」

とだけ怒鳴って、嵐のように消えた。静かになったのは一瞬だけだった。

「だいたいな!」代表の演説は止まらない。「これからは人手不足なんて嘘っぱちになるんや!蒸気とカラクリの時代やで!」

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」とジム総長が腕を組む。

「そうや!」代表は舶来品の硝子瓶(がらすびん)を振り回す。「わが党が開発した究極カラクリ人形が、全部の仕事をやってくれる!その名は『キシンジャーZ』や!」

……昨日まで『河野太郎』って言ってませんでしたっけ?

わたしが混乱していると、屯所の入り口が、今度は悲鳴と共に破壊された。

「きょーおも、まきまき!逆から読んでも、まさきまき!代表!まきまきをクビにするなんて、どういうことですかああああっ!」

まきまきさんだった。先日までここで働いていたのに、旦那様の辻斬り(Xポスト)が原因でクビになったと噂の…。

「なんやと!党の和を乱すやつは許さん!」

代表は叫ぶと、手に持っていた硝子瓶をまきまきさんに向かって投げつけた。

「ええゆうてるんちゃうで!」

硝子瓶は放物線を描き、まきまきさんがひらりとかわしたその先──パイプユニッシュ様の額にクリーンヒットした。カーン!と乾いた音がして、自慢の煙管が真っ二つに折れた。パイプ、物理的にも詰んだ。

「結果として代表の投擲で利しているのは、硝子瓶を作った異国の商人ね」

ジム総長が冷静に分析する横で、カレーの本質🍛さんが涙ながらに叫ぶ。

「違う!これは党の規律を教えるための、代表の愛の鉄槌なんだ!」

お金、嘘、詰まったパイプ、デマ、怒号、情緒不安定、そして暴力。

この混沌の坩堝(るつぼ)の真ん中で、わたしは、拭き終えた湯呑みをカタンと置いた。

そして、生まれて初めて、震える声で言った。

「……あの、代表。皆様のお話、少しだけ、ほんの少しだけ……おかしいような気が、しませんか?」

部屋中の視線が、わたし一人に突き刺さる。空気が凍りついた。

代表は投げつける硝子瓶を探すかのようにあたりを見回し、やがてわたしを見ると、ニヤリと不気味に笑った。

「SFやで」

その一言で、全てがどうでもよくなった。と同時に、何かが、わたしの中で確かに始まった気がした。このポンコツたちの船から降りるのか、それとも舵を取り戻そうとするのか。まだ分からない。でも、わたしはもう、ただ湯呑みを拭いているだけの娘では、ない。

【にっぽんぽん・あさっての党】夜明けのぺっとぼとる

時は幕末から明治へと移り変わる、文明開化の音が響く東京。

わたし、チ~サは、政治結社「にっぽんぽん・あさっての党」の薄暗い屯所の隅っこで、今日もガタガタと震えていた。

「あ、あの……党の瓦版から、まきまきさんの名前が綺麗さっぱり墨で黒塗りされてるんですけど……」

わたしがおずおずと尋ねると、ジム総長が扇子をパチンと鳴らして鼻で笑った。

「今日はその話ですか? 見た!アタシそれ見た!(実際は見てない) こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」

隣で算盤を弾いていた代表が、小判を撫で回しながら関西弁で吐き捨てた。

「ええゆうてるんちゃうで! ワシの金儲けの邪魔する奴はSFやで!」

言うが早いか、代表は飲みかけの南蛮伝来・ぺっとぼとるをわたしめがけて投げつけてきた。ドゴッ!
ひぃっ、と身をすくめるわたしの前に、カレーの本質🍛さんが猛烈な勢いでスライディングしてきた。

「代表の仰る通りです! ボクは理解しています! 代表がぺっとぼとるを投下なされるのは、地球の重力という物理法則への深い愛と憂慮からくる尊い行動なのです! 命がけでエクストリーム擁護します!」

そんな混沌とした屯所の障子を蹴破り、一人の女が乱入してきた。情緒不安定な笑い声を上げながら、千切れた公認証書を振り回している。

「まきまき! 今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

彼女こそ、元党職員であり、先の選挙で公認候補だったものの、夫の飛ばした「X(えっくす)飛脚状」のせいで突如クビにされた、まきまきさんだ。

「ジム総長の嘘つき! 表では『大坂や兵庫の丁稚(ボランティア)は素晴らしい』とか言っておいて、裏では実名でボロクソに腐してたの、まきまき全部知ってるんだから! 若い町娘が代表にすり寄ると、般若みたいな顔で嫉妬して監視体制を敷いてるのもね!」

まきまきさんが涙目になりながら叫ぶと、ジム総長はすました顔で言い放つ。

「結果として、まきまきの行動で利しているのは清国よ。アタシは何も言ってないわ」

そこへ、梁の上からま猿🐒が飛び降りてきた。

「ウキー! まきまきは算盤一級持ってないウキ! 東レの職人でもないウキ! 勤務実態なんてなかったウキ! デコバカ!」

有本派インフルエンサーとしてデマの達人であるま猿は、あることないこと(全弾ないこと)を叫ぶと、瞬時に窓から去っていった。
さらに奥の部屋からピライさんが顔を出し、「うるさい! 静かにしろ!」とだけ怒鳴って、すぐに立ち去る。

波乱のテンポは止まらない。
まきまきさんは懐から「録音機(えじそんのやつ)」を取り出した。

「暴行や妨害をしてきて『ここで撮影するなというのは党のルールだ』って嘘ついた連中の言質、トップも含めて全部取ってあるんだから! 責任転嫁は許さない!
それに、飯山あかり先生を奉行所にスラップ訴訟するとか言って、絶対勝てるわけないのに! 逆に『我が党はLGBTについて選挙で何もしてない』って世間にバレて、やぶ蛇になるだけだって、まきまき止めたよね!?」

代表は耳をほじりながら事なかれ主義全開で答える。

「恋すれば何でもない距離やけど」

ドゴッ。再びぺっとぼとるが宙を舞う。
代表は丸投げの無責任だ。党員たちが青い法被を着て「右の社民党」みたいに近寄りがたいシュプレヒコールを上げていても、当たり屋のように自ら転んで診断書をもらってくる輩がいても、すべて放置して見て見ぬふり。

その時、福井弁を操るパイプユニッシュさんが自信満々に腕を組んで現れた。

「拙者の出番か! 異国の虎ンプ大統領とのパイプがあるでな! 党勢拡大は間違いないんやざ! 政策で勝負じゃの!」
(……絶対そのパイプ、ヘドロで詰まってるよ……)

わたしはいつもなら、この狂った内ゲバとデマの嵐の中で泣き寝入りするだけの、臆病でおとなしいチ~サだった。
でも、必死に真実を訴えるまきまきさんを嘘つき呼ばわりし、寄ってたかって歴史から抹消しようとするこのカルト的な隠蔽体質に、ついにわたしの中で何かが弾けた。

「……もう、やめてください!」

わたしは立ち上がった。もう震えは止まっていた。

「ジム総長は息をするように嘘をつくし! カレーさんは意味不明だし! まきまきさんが言ってることの方が、証拠もあって正しいじゃないですか!」

一同がポカンとわたしを見る。

「ええゆうてるんちゃうで……SFやで……」
代表が三本目のぺっとぼとるを手に取った瞬間、わたしは床に落ちていた一本を拾い上げ、渾身の力で代表の顔面めがけて投げ返した。

スパーンッ!

見事な放物線を描いたぺっとぼとるが、代表の額にクリーンヒットした。
静まり返る屯所に、まきまきさんの笑い声だけが高らかに響き渡る。

「今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

臆病でおとなしかったわたしは、もういない。
激動の明治、わたしの本当の夜明けは、この狂った党を飛び出した今日、この瞬間から始まるのだ。

『幕末カルト狂騒曲!〜飛ぶペットボトルと犬笛の屯所を抜け出して、わたしとまきまきは「あさって」の空へ〜』

 時は明治初期。

文明開化の足音が聞こえ始めた東京の片隅で、わたし、チ~サは今日も「にっぽんぽん・あさっての党」の屯所の隅っこで、ガタガタと震えていた。
臆病でおとなしいわたしには、この党の空気はあまりにも過激すぎるのだ。

ドンッ!
突然、屯所の障子が派手に吹き飛び、一人の女が転がり込んできた。

「今日もまきまき!逆から読んでもまさきまき!」

かなり情緒不安定な元党員の、まきまきだ。
彼女は先の選挙で公認候補者として出馬し落選、その後、夫が瓦版の「飛脚ポスト(通称・Xポスト)」で不用意な発言をしたせいで、理不尽にも党をクビにされた悲劇の女性である。

「ちょっと! あんたら、まきまき!の長屋の番地を晒した上に、お奉行所に『育児放棄だ』って虚偽の訴えを出したわね! あたしの旦那まで飛脚問屋をクビになったじゃないの!」

彼女の悲痛な叫びに対し、代表が懐から南蛮渡来の謎の筒「ペットボトル」を取り出し、まきまきの顔面めがけて全力で投げつけた。

「ええゆうてるんちゃうで! ワシはお金が大好きなんや! お布施を払わん奴の面倒は見ん! 恋すれば何でもない距離やけど、それは匿名の信者が勝手にやっとるネットリンチや!」

明らかな犬笛で信者を煽動しておきながら、この男はどこまでも卑怯者である。

そこへ、ジム総長が優雅に「糸電話(カンカン電話)」を片手に現れた。

「今日はその話ですか? 見た!アタシそれ見た!(実際は見てない)」

「嘘ばっかり! あんた、異人の受け入れ上限がないってデマを流して民草の恐怖を煽ったじゃない! そのくせ遅刻無双で、糸電話で人の話を遮ってばっかり!」

まきまきが食ってかかるが、ジム総長は天然ボケなのか虚言癖なのか、涼しい顔だ。

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果としてまきまきの行動で利しているのは、旧幕府軍よ」

突如、天井裏からま猿🐒が乱入してきた。

「ウキー! 異人は明日100万人攻めてきて、江戸中のバナナを食い尽くすウキ! デコバカ!」

息を吐くようにデマだけを叫び、ま猿は一瞬で窓から立ち去った。

「うるさい!静かにしろ!」

部屋の隅でずっと茶を飲んでいたピライが突如ブチギレて怒鳴り、彼もまた、風のように屯所を出て行った。会話のドッジボールすら成立していない。

「ボクは代表を支持する!」

カレーの本質🍛が、代表の足元に猛烈なスライディング土下座を決めた。

「代表がペットボトルを投げたのは、まきまきさんに南蛮の最先端技術を教えるための愛の鞭なんだ! ボクは命がけで代表を守る!」

あまりのエクストリーム擁護に、わたしはめまいを覚えた。
さらに、奥の襖がスパーンと開き、パイプユニッシュが偉そうに胸を張って現れた。

「拙者、メリケンの『とらんぷ』と太いパイプがあるでの! 党勢拡大は間違いない! 政策で勝負じゃ!」

だが、彼の背後には見事に詰まりきった泥だらけの竹パイプが虚しく転がっている。

「もうやだ! あたしは犬笛で煽られた信者たちに実生活まで破壊されてるのよ! 独裁と粛清ばっかりで、あんたたち人間力ゼロじゃない!」

まきまきが泣き叫び、代表が「SFやで!」と叫びながら二本目のペットボトルを投擲し、ジム総長が糸電話に向かって「アタシそれ見た!」と連呼する。

カオス。完全なる地獄絵図。
今までわたしは、怖いから黙って従っていた。
権力にすり寄り、気に入らない者を理不尽に粛清し、デマを流しては仲間を売る。これが新時代の「保守」の姿だというのか?
いや、違う。

この瞬間、わたしの内なる「何か」が弾けた。

「……いい加減にしなさいよぉぉぉッ!!」

わたしの絶叫に、狂乱の屯所の空気がピタリと止まった。

「ペットボトルは人に投げるな! デマと犬笛で人の生活を壊すなんて、イエスマンだけのカルト結社じゃない! わたし、こんな党、もう辞めてやるわ!」

わたしは、床に座り込むまきまきの手を力強く握りしめた。

「まきまきさん、行きましょう! わたしたちの『あさって』は、こんな掃き溜めにはないわ!」
「チ~サ……! うん、今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

こうしてわたしは、狂気の党から脱退した。
外に出ると、文明開化の青空がどこまでも高く澄み渡っていた。
わたしの足取りは、かつてなく軽い。

彼らの狂気は、やがて歴史の闇に消えるのだろうか。それとも、人間の業として形を変え繰り返されるのだろうか。
だが、少なくともわたしが自らの意志で踏み出したこの一歩は、確かに新しい未来へと続いているのだ。

2026-03-09

幕末デマ瓦版『にっぽんぽん・あさっての党』大騒動!〜ペリー来航はワシの生誕祭!?飛び交う嘘とペットボトルを華麗に避けて、わたしはメディアリテラシーの夜明けを知る〜

 時は幕末から明治初期へと移り変わる帝都・東京。

ちょんまげと散切り頭が交差する喧騒の片隅で、わたし、チ~サは今日もガタガタと震えていた。

わたしが身を寄せているのは、新時代の瓦版屋『にっぽんぽん・あさっての党』。
臆病でおとなしいわたしには、この党の熱気は少々、いや、かなり胃に重い。

「ペリーが浦賀に来たのは、ワシが生まれた年や! そして名もなき漁師がスゴイ平頭の銛を発明して、キューバとかいう南蛮の危機も全部ワシの生誕祭や! 既存の御用瓦版は全部財務省の手先やで! SFやで!」

ドゴォン!
代表が、この時代にあるはずのない透明な筒……そう、ペットボトルを壁に投げつけながら叫んだ。
お金が大好きで卑怯な代表だが、口から飛び出す歴史は常に時空が歪んでいる。

「今日はその話ですか?」

すかさず相槌を打つのは、ジム総長。
天然ボケにして虚言の達人である彼女は、扇子を優雅に広げて言い放つ。

「見た! アタシそれ見た! ペリーの黒船のへさきで、代表が産湯を使ってるの絶対見た! ちなみに消費税的なものは全部ゼロにするわよ! 財源? そんなの打ち出の小槌よ!」

いや、見てないですよね? そもそも年代がむちゃくちゃだし、無責任な大衆迎合(ポピュリズム)が過ぎます。
心の中で突っ込むわたしの横を、ちょんまげ姿の男が勢いよく通り抜けた。

「メリケンのトランプ大統領と拙者のパイプは太い! 外国からの学生ビザも停止じゃ! 党勢拡大は間違いない! 政策で勝負じゃ!」

パイプユニッシュさんだ。
福井弁の訛りも勇ましく偉そうに語るが、そのパイプ、完全にススで詰まっている。そもそもトランプ大統領って誰ですか。幕末にいませんよ。

すると突然、毛むくじゃらの影が障子を突き破って飛び込んできた。

「ウキー! スリランカの南蛮人は全員モスクを建てるんや! 江戸の公団長屋は全部スラム化して乗っ取られるぞ! ワシが言うんやから間違いない! デコバカ!」

ま猿だ。デマの達人である彼は、排外主義的で差別的なデマを撒き散らすと、嵐のように去っていった。
その後ろから、エプロン姿の青年が目を血走らせて飛び出してくる。

「ボクは代表を信じます! 代表の歴史的年号の間違いや排外主義は、実は新政府軍を欺くための高度な暗号なんです! 命がけで代表をエクストリーム擁護します!」

カレーの本質さんだ。彼の擁護はもはや宗教の域に達している。
あまりのカオスにわたしが頭を抱えていると、ふすまがピシャアッ!と開き、険しい顔の男が顔を出した。

「うるさい! 静かにしろ!」

ピライさんだ。彼は一喝するや否や、一秒で立ち去った。本当に何をしに来たの。

「まきまきー! 逆から読んでもまさきまき!」

さらには、情緒不安定な元職員のまきまきさんまで乱入してきた。
「旦那の文(ふみ)のせいでクビになったけど、まきまきの心は自由よぉぉ!」
踊り狂う彼女を見て、ジム総長が冷ややかに呟く。

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果としてまきまきの行動で利しているのは薩長ね」

もう、めちゃくちゃだ。
彼らが刷り上げている瓦版には、『他党は嘘つき! ワシらだけが真実!』と書かれている。しかし彼ら自身の行いと言えば、「確認団体」という脱法的な抜け道でビラを撒いて言い逃れをする始末。
中身はダブルスタンダードとデマのフルコース。
このままでは、江戸の街が排外主義と扇動の渦に飲まれてしまう。

いつもなら部屋の隅で震えているだけのわたし。
でも、今日だけは……今日だけは言わなきゃ!

「あ、あのっ!」

わたしは、思い切り声を張り上げた。

「代表の生まれた年、幕末でもキューバ危機でもありません! それに、平頭銛を発明したのは漁師じゃなくて学者さんです! 瓦版の内容、全部適当なデマじゃないですか……っ!」

しん、と部屋が静まり返る。
言ってしまった。殺されるかもしれない。
代表が、ゆっくりとこちらを向いた。そして、手元のペットボトルをふりかぶる。

「ええゆうてるんちゃうで! 恋すれば何でもない距離やけど!」

ヒュオンッ!
猛スピードで飛んできたペットボトルを、わたしは……スッと、紙一重で避けた。

「……え?」

代表が目を丸くする。わたし自身も驚いた。
いつもなら縮み上がって当たっていたはずなのに。

「……SFやで」

代表の呟きを背に、わたしは深く息を吐いた。
この瓦版屋のデマと扇動は、これからも続くだろう。この国はまだまだ情報に惑わされやすい。
でも、わたしはもう、飛んでくるペットボトル(とデマ)を避ける術を覚えたのだ。メディア・リテラシーという名の、確かな盾を胸に。

文明開化していく明治の空は、果てしなく青く、そして少しだけ笑えた。

2026-03-08

【幕末狂騒曲】あさっての方向へ全力疾走!〜ホログラム無給志士の乱〜

時は明治初期の東京。

ガス灯の明かりが文明開化を告げる街の片隅に、その屯所(とんしょ)はあった。「にっぽんぽん・あさっての党」である。

わたし、チ~サは、今日も部屋の隅でガタガタと震えていた。
おとなしくて臆病なわたしには、この党の空気は刺激が強すぎるのだ。

「ヒヒヒ、今日も銭が貯まる貯まる……ええゆうてるんちゃうで! ワシの才能はSFやで!」
上座で南蛮渡来の透明な筒――「ペットボトル」なるものを弄びながら笑うのは、党の代表だ。

「今日はその話ですか?」
隣で優雅に扇子を扇ぐのは、女帝ことジム総長。
「アタシ、この党が天下を取る姿、見た! アタシそれ見た! ま、こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」
(※彼女は絶対に見ていないし、昨日まで全く違うことを言っていた)

その時、屯所のふすまが「バーン!」と勢いよく開き、奇抜なザンギリ頭の女が転がり込んできた。
「逆から読んでもまさきまき!」

元党員の、まきまきだ。かつては参議院議員候補にまでなったが、旦那の瓦版(Xポスト)への書き込みが原因でクビになったという、情緒不安定すぎる御仁である。

「聞いてよチ~サ! まきまき、時給三百文以下の無給奉公で一日十四時間も働かされたの! なのにジム総長ったら『まきまきの方から給金はいらないって泣いて頼んできた』なんて大ウソの瓦版を撒き散らしたのよ! 私の姿は幻燈機(ホログラム)か何かに見えていたっていうの!?」

まきまきは涙と笑いを交互に浮かべながら、凄まじいテンションでまくしたてる。
彼女の告発によれば、ジム総長は党の凱旋パレードを独り占めするため、美形で有能な志士を片っ端から「お断り」しているらしい。代表が南蛮の絵草紙屋(アベマTV)に呼ばれても、そこに若い娘がいるとわかれば全力で出演を阻止し、代表を屯所に幽閉しているというのだ。

「おまけに党の『ホハヒー!』って叫ぶ親衛隊たちに、旦那の飛脚の仕事先から、子供の寺子屋にまで『あいつの夫は異国・北朝鮮の工作員だ!』って怪文書を送られたのよ! まきまき一家、見事な明治の村八分よ! まきまき!」

あまりの悲惨さにわたしが言葉を失っていると、代表が突如、わたしに向かってペットボトルを力いっぱい投げつけてきた。

「痛っ!」
「ワシは知らん! 恋すれば何でもない距離やけどな!」
意味がわからない。どうやら彼なりの照れ隠しらしいが、卑怯者の極みである。

すかさず、部屋の隅からカレーの本質🍛が飛んできた。
「ボクは命懸けで代表を擁護する! 代表は囚われの天才ベストセラー戯作者なんだ! 悪いのは全部、周りの環境だ!」

するとジム総長が鼻で笑った。
「まきまき、結果としてあなたの行動で利しているのは、敵対するリベラル藩よ」

「拙者に任せておけ!」
福井訛りの男、パイプユニッシュが唐突に立ち上がった。
「メリケンのトランプ大統領ともパイプがあるこの拙者がおる限り、党勢拡大は間違いない! 政策で勝負じゃ!」
しかし、彼の誇らしげに握りしめている竹のパイプは、どう見ても泥で完全に詰まっていた。

「ウキー! まきまきは異人の手先ウキ! デコバカ!」
ま猿🐒がデマだけを撒き散らして、木の上に去っていく。

「うるさい! 静かにしろ!」
ピライがふすまを開けて怒鳴り込んできたかと思うと、そのまま一歩も中に入らずにドスドスと去っていった。

「まきまき! もうこんな党、知ーらない! 逆から読んでもまさきまき!」
まきまきは嵐のように叫ぶと、再び夜の街へと駆け去っていった。

静寂が戻った屯所。
「ひどい……いくらなんでも、まきまきさんが可哀想……」
わたしは震える手で、代表が投げ捨てたペットボトルを見つめた。
政治とは、愛国心とは、一体何なのだろうか。

「ワシの書く物語はSFやで!」
代表が再び、新しいペットボトルをわたしに向けて投げつけてくる。

しかし、その瞬間、わたしの中の何かが弾けた。

パシッ!

わたしは飛んできたペットボトルを、空中で華麗に見切ってキャッチした。
「……チ、チ~サ?」
代表が目を丸くする。

「わたし、もう少し強く生きます」

こんな魑魅魍魎たちの巣窟で生き残るには、ただ怯えているわけにはいかない。わたしはペットボトルの蓋を開け、中の水を一気に飲み干した。

遠くで、文明開化の音がする。
わたしが飲み干したのは、狂気という名の新しい時代の水だったのかもしれない。

あさって党奇譚 ~ポンコツたちの文明開化~

 文明開化の煙が東京の空をまだらに染めていた、明治の初め。わたし、チ~サは「にっぽんぽん・あさっての党」の薄暗い屯所(とんしょ)で、湯呑みを拭いていた。今日も今日とて、お偉いさん方の奇想天外な会合が始まるのだ。 「ええか、チ~サ!よう聞いとけ!これが新しい日本の夜明けや!」 部屋...