2025-01-30

むかしむかし、ある党にて

 

むかしむかし、ある党にて

むかしむかし、日本保守党という一団があった。
彼らは「保守」を掲げながら、毎日何かを壊し続ける不思議な集団であった。

その日の朝、事務総長は配信を始めた。

「代表のお母様が98歳で亡くなりました。まずね、ここでもちょっと申し上げたいのは、結構日本保守党の事務所にですね、お問い合わせとか、あるいはその…」

事務総長は一瞬、言葉を詰まらせた。

——日本保守党の事務所
——問い合わせ

ちさは、その言葉にひっかかった。

(わたし、聞いたことないぞ…保守党の事務所って。)

そう、そもそも日本保守党の本部の電話番号は非公開なのだ。

「…どうやって問い合わせたの?」

ちさの呟きが、配信の空気を変えた。

事務総長はハッとした顔でちさを見た。

「……今日はその話ですか?」

「いやいやいや! そこが気になるんですよ!」

知ってる、アタシそれ知ってる!

「え!? 知ってるんですか!?」

事務総長は胸を張った。

「えーとね、お問い合わせっていうのは、まぁ……その……ほら、アレよ、アレ!

「アレって何です?」

「……なるほどね!」

「いや、なるほどじゃなくて!!」

ちさは混乱した。
(わたし、どこかおかしな世界に迷い込んでる…?)

その時、背後から代表が登場した。

ええゆうてるんちゃうで! ワシはな、母を亡くしても、党のために頑張っとるんや! SFやで!

「……代表、今の流れでSFは関係ないですよね!?」

代表はキッとちさを見つめた。

恋すれば何でもない距離やけど、疑えば果てしない距離になるんや…!

「いや、わたし何も恋してないです!!」

SFやで!

(もうダメだ…話が通じない…!)

すると、別の声が響いた。

政策で勝負じゃ!

振り向くと、そこにはパイプユニッシュがいた。

「党勢拡大は間違いない! 代表の母君の弔い合戦として、日本保守党はさらに強くなるのだ!」

「いやいや、何の話です!? なんで党勢拡大の話になってるんですか!?」

パイプユニッシュは、ふんと鼻を鳴らした。

「つまりな、拙者たちが問い合わせが来るほど注目されているということ! これは誇るべきことよ!

「いや、そもそも電話番号公開されてないんですよね!? どうやって問い合わせたんですか!?」

事務総長が慌てて割り込んだ。

「そ、それは…その…」

「……その?」

なるほどね!

「またそれかーーー!!!」

ちさは叫んだ。
しかし、誰も答えを持っていなかった。

——なぜ、問い合わせができたのか。
——そもそも、本当に問い合わせはあったのか。

それを知る者は、誰一人としていなかったのだった。

おしまい。


0 件のコメント:

コメントを投稿