2025-01-30

虚空に響く声

 

虚空に響く声

「ねえ、保守ってなんだと思う?」

ちさは問いかける。
だが、冬の風は冷たく、その声を誰の耳にも届けないまま流れていく。

日本保守党の事務所。
扉の向こうには、何かがある。
いや、あると「思いたい」何かが、ある。

ちさは一歩、足を踏み入れる。

そこは、果てのない廊下だった。
時計はない。窓もない。
ただ、響く声がある。

「知ってる、アタシそれ知ってる!」

ふいに、声がした。

ちさが振り向くと、そこにはひとりの女がいた。

事務総長——
その名の通り、事務を司る者でありながら、事務を知らぬ者。
彼女は微笑んでいた。

「今日はその話ですか?」

ちさは息を呑む。

この会話は、意味を成すのか?

「あなたは何を知っているの?」

ちさがそう問うと、事務総長は少し考えたようだったが——

「知ってる、アタシそれ知ってる!」

……また、同じ言葉が返ってくる。

終わりなき円環

「ええゆうてるんちゃうで! ワシらは戦うんや! SFやで!」

別の声が響く。

奥の闇から、代表が現れる。
その顔は満足げで、手には小さな札束が握られていた。

「恋すれば何でもない距離やけど、疑えば——」

言いかけて、彼は急に口をつぐんだ。

「……いや、これは言わんことになっとったな」

誰に言われたのか。
誰が決めたのか。
その答えは、彼自身にも分からない。

「代表、戦うべき敵って誰なんですか?」

ちさは問う。

「そんなん決まっとる! 今の政権政府や!」

「でも、保守って、本来は国家を守るものじゃないんですか?」

「ええゆうてるんちゃうで! ええか、日本を守るために、ワシらは日本と戦うんや!」

ちさの思考が、ふっと宙に浮いた。

「……それは、どういう意味ですか?」

「SFやで!」

言葉が、思考を殺す。

光のない道

「政策で勝負じゃ!」

また別の声がした。

そこには、「パイプユニッシュ」と名乗る議員が立っていた。

「党勢拡大は間違いない!」

ちさは立ち尽くす。

「あなたの言う『政策』って……国民のためのものですか?」

「拙者のための政策が、すなわち国のためよ!」

この世界には、境界がない。

正義と独善
国家と政党
理想と私利私欲

どこに線を引くのか、誰も決めない。

そして——

「訴訟じゃ!」

その瞬間、声が響いた。

「存在そのものが名誉毀損じゃ!」

振り向くと、そこに「コトエ」がいた。

彼女の言葉は鋭く、しかし、何ひとつ刺さらない。

言葉とは何か?
意味を持つのか?
持たないのか?

分からぬままに、また一つの声が響く。

「キャキャキャキャキャ!」

ま猿🐒が甲高く笑い、闇へと消えていった。

沈黙の果てに

「うるさい! 静かにしろ!」

突然の怒声。

「ピライ」が拳を振り上げていた。

「誰も、何も、分かっていない!」

彼の叫びは正しいのか、間違っているのか。
それさえも、分からない。

ただ一つ、ちさは確信した。

——ここには、答えがない。

虚空を見つめる者

ちさは、振り返る。

この場所に、光はない。
思想もない。
ただ、「声」だけがある。

「ねえ、保守ってなんだと思う?」

もう一度、問いかける。

だが、冬の風は冷たく——

その声を、誰の耳にも届けないまま流れていく。


https://x.com/lif_agitator/status/1884914540531556481


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ハマス

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