むかしむかし、ある党にて
むかしむかし、日本保守党という一団があった。
彼らは「保守」を掲げながら、毎日何かを壊し続ける不思議な集団であった。
その日の朝、事務総長は配信を始めた。
「代表のお母様が98歳で亡くなりました。まずね、ここでもちょっと申し上げたいのは、結構日本保守党の事務所にですね、お問い合わせとか、あるいはその…」
事務総長は一瞬、言葉を詰まらせた。
——日本保守党の事務所?
——問い合わせ?
ちさは、その言葉にひっかかった。
(わたし、聞いたことないぞ…保守党の事務所って。)
そう、そもそも日本保守党の本部の電話番号は非公開なのだ。
「…どうやって問い合わせたの?」
ちさの呟きが、配信の空気を変えた。
事務総長はハッとした顔でちさを見た。
「……今日はその話ですか?」
「いやいやいや! そこが気になるんですよ!」
「知ってる、アタシそれ知ってる!」
「え!? 知ってるんですか!?」
事務総長は胸を張った。
「えーとね、お問い合わせっていうのは、まぁ……その……ほら、アレよ、アレ!」
「アレって何です?」
「……なるほどね!」
「いや、なるほどじゃなくて!!」
ちさは混乱した。
(わたし、どこかおかしな世界に迷い込んでる…?)
その時、背後から代表が登場した。
「ええゆうてるんちゃうで! ワシはな、母を亡くしても、党のために頑張っとるんや! SFやで!」
「……代表、今の流れでSFは関係ないですよね!?」
代表はキッとちさを見つめた。
「恋すれば何でもない距離やけど、疑えば果てしない距離になるんや…!」
「いや、わたし何も恋してないです!!」
「SFやで!」
(もうダメだ…話が通じない…!)
すると、別の声が響いた。
「政策で勝負じゃ!」
振り向くと、そこにはパイプユニッシュがいた。
「党勢拡大は間違いない! 代表の母君の弔い合戦として、日本保守党はさらに強くなるのだ!」
「いやいや、何の話です!? なんで党勢拡大の話になってるんですか!?」
パイプユニッシュは、ふんと鼻を鳴らした。
「つまりな、拙者たちが問い合わせが来るほど注目されているということ! これは誇るべきことよ!」
「いや、そもそも電話番号公開されてないんですよね!? どうやって問い合わせたんですか!?」
事務総長が慌てて割り込んだ。
「そ、それは…その…」
「……その?」
「なるほどね!」
「またそれかーーー!!!」
ちさは叫んだ。
しかし、誰も答えを持っていなかった。
——なぜ、問い合わせができたのか。
——そもそも、本当に問い合わせはあったのか。
それを知る者は、誰一人としていなかったのだった。
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