2025-02-09

令和七年一月二十四日提出 日朝間の外交交渉における記録欠落と内容の漏洩に関する質問主意書 提出者  島田洋一

 日朝間の外交交渉における記録欠落と内容の漏洩に関する質問主意書



 外交交渉の過程について政府はその内容の多くについて非公開を原則としている。本原則は、交渉内容を相手の合意なく公開すれば、その後の交渉に支障が生じるおそれがあるため、基本的に合理性があると考えられる。ただし、交渉担当者は、後任への引継ぎや史的検証のため、正確な記録を残さなければならない。
 以上のような前提に立ち、以下質問する。

一 産経新聞は、平成二十年二月九日、「平成十四年九月の小泉純一郎首相による初の北朝鮮訪問直前に、当時の外務省の田中均アジア大洋州局長らが北朝鮮側と行った二回分の日朝交渉の記録文書が欠落し、省内に保管されていないことが八日、複数の政府高官の証言で明らかになった」と報じた。また、安倍晋三元首相は首相在任中の平成二十五年六月十二日、SNS上で田中氏に触れる中で「そもそも彼は交渉記録を一部残していません」と記載し、日朝交渉記録文書の一部が欠落している旨を公にした。外務省が管理する日朝交渉記録文書に、事実そうした欠落があるのか、確認を求める。

二 斎木昭隆元外務事務次官が、自身が外務次官として関わった日朝ストックホルム合意に関し、次のように述べた旨を令和四年九月十七日、朝日新聞が報じた。すなわち、「北朝鮮からは、拉致被害者の田中実さんや知人の金田龍光さんの生存情報が提供されたと報じられています」という朝日新聞記者の質問に対し、斎木氏は、「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りです。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取りませんでした」と答えたとされている。これは秘密保持が原則であるはずの交渉内容の一部を漏洩したものと言わざるを得ないと考える。この朝日新聞の報道以前に、共同通信も、匿名の政府関係者を情報源と明記した上で、同内容の報道を行っている。政府はこうした情報漏洩に関し、斎木氏に抗議したのか。また、再発防止のためいかなる措置を講じたのか。

三 前記のような、外交交渉における情報の取扱いについての政府の見解を伺う。
 
 右質問する。

衆議院議員島田洋一君提出日朝間の外交交渉における記録欠落と内容の漏洩に関する質問に対する答弁書 

一について   お尋ねについては、今後の日朝間の協議に支障を来すおそれがあることから、外務省としてお答えすることは差し控えたい。 
二について   いわゆる「ストックホルム合意」以降、北朝鮮の特別調査委員会による調査について、北朝鮮から調査結果の通報はなく、報告書も提出はされていない。お尋ねの「漏洩したものと言わざるを得ない」及び「こうした情報漏洩」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「抗議」及び「再発防止のため」の「措置」については、外務省として行っていない。 
三について   お尋ねの「前記のような、外交交渉における情報の取扱い」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外務省としては、従来から秘密の保全に努めているところである。

1. 質問の不明確さ

質問主意書において、いくつかの箇所で質問があいまいで、具体的な答えを引き出すのが難しくなっています。

  • 例1: 一の質問では、「日朝交渉記録文書に欠落があるか、確認を求める」とありますが、欠落があるという前提で書かれており、証拠や具体的な事実の確認が抜け落ちています。外務省が答弁を避ける余地を与えてしまうため、「記録欠落の事実があるか」を明確に確認する形で質問を構築するべきです。

  • 例2: 二の質問で、「漏洩したものと言わざるを得ない」という表現が使われていますが、このように感情的・主観的な言い回しは、相手側に反論の余地を与え、具体的な回答を引き出す効果を薄めます。「漏洩した情報があったか」など、事実確認を直接的に求める表現にすべきです。

批判:

  • 質問が抽象的すぎて、回答が曖昧になりやすく、政府側の逃げ道を与える形になっています。具体的な事実に基づいた質問をすることで、明確な回答を得ることが可能になりますが、この書き方では逆に答弁を避けられる可能性があります。

2. 質問の構成における問題

質問主意書は3つの項目に分かれていますが、それぞれが独立していて、全体的に質問のつながりが薄く、流れが不自然に感じられます。

  • 例1: 一の質問と二の質問は、異なる事例や事実を取り上げており、それぞれに対して異なる回答が必要です。だが、質問主意書内でそれぞれの事例が一貫したテーマで結びついていないため、外務省側が個別に対応しやすくなります。全体的なテーマ(例えば、外交交渉の記録管理や情報漏洩の防止)で統一し、その中で個別事例を取り上げる方が、政府に対して強い圧力をかけることができるでしょう。

批判:

  • 質問の構成が散漫で、個別の事案に対する質問がバラバラに設定されています。質問に一貫性が欠けているため、外務省側が答えやすく、追求の力が弱まっています。質問全体としてのテーマをしっかりと統一し、各質問がそのテーマに沿っているべきです。

3. 証拠や具体例の欠如

質問主意書には、具体的な証拠や事実が足りていません。例えば、日朝交渉の記録欠落について具体的な証拠や状況を挙げることで、外務省側の対応を厳しく追及することができるはずです。

  • 例1: 一の質問で「記録が欠落している」と言及されていますが、その欠落に関する具体的な証拠(例えば、関係者の証言や報道機関の具体的な報道内容)が提示されていません。これでは、外務省が答弁を避ける際に「証拠がない」と言い逃れできる余地を与えてしまいます。

  • 例2: 二の質問で、斎木昭隆氏の発言に関して漏洩を指摘していますが、発言内容がどのように漏洩したのか、具体的な経緯やその後の影響についての詳細が欠けています。これでは外務省側が「発言の内容自体は問題ない」と反論しやすくなります。

批判:

  • 質問内容に証拠や具体的な詳細が欠けており、政府に対する追及が弱くなっています。質問主意書が具体的な証拠に基づいて構成されていれば、外務省の回答に対して更なる反論が可能となり、答弁の誤魔化しが困難になります。証拠や具体的な事実を取り入れ、質問を精密に組み立てるべきです。

4. 言葉選びにおける感情的な表現

質問主意書内で使用されている表現の中には、感情的・主観的な要素が含まれています。例えば、「漏洩したものと言わざるを得ない」「こうした情報漏洩」など、感情が先行した表現です。

  • 例1: 「漏洩したものと言わざるを得ない」という表現は、事実を確認するというよりも、自分の主張を強調する形になります。これは、相手側に反論を許す余地を与えてしまうため、冷静かつ事実に基づいた表現を用いるべきです。

  • 例2: 「こうした情報漏洩」という言い回しも、特定の情報を指すのか、一般的な事象を指すのかが不明確であり、曖昧さを招きます。

批判:

  • 言葉選びが感情的であり、冷静な論理的追及が欠けています。このような表現では、政府側が「感情的な議論に過ぎない」として簡単に逃げることができます。質問は客観的かつ冷静に行うべきで、感情的な表現を排除すべきです。

5. 再発防止に関する具体的な質問の欠如

情報漏洩や記録管理に関する再発防止策についての質問はありますが、それに対する具体的な追求が不足しています。

  • 例1: 三の質問では「再発防止のためいかなる措置を講じたのか」とありますが、この質問が非常に抽象的であり、再発防止策を具体的に尋ねるべきです。例えば、「情報漏洩防止のためにどのような体制を整備しているのか」「どのようなチェック体制を導入したのか」など、具体的な施策を求めるべきです。

批判:

  • 再発防止に関する質問が曖昧であり、実効性のある措置を引き出せる形になっていません。再発防止の具体策を問うことは、政府側の責任を問う上で重要です。もっと詳細に、具体的な対策や体制について質問を構築する必要があります。

結論

この「質問主意書」は、質問が抽象的であり、具体的な証拠や詳細が欠けているため、政府に対する追及が不十分です。また、質問の構成や言葉選びが感情的であり、冷静かつ論理的な追求を欠いています。質問をより明確にし、具体的な証拠や詳細な追及を盛り込み、冷静な言葉で構成することで、より強い圧力を政府にかけることができたでしょう。


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