タイトル:いま、私たちは「どう死ぬのか」──統計から見える日本の死のかたち
第1章 授業のはじまりに:現代日本の「死」を見つめる
今回のテーマは「現在の日本における死の現状」です。
皆さんは、日本で一年間にどれくらいの人が亡くなっているか、ご存じでしょうか?
そして、あなたが暮らす都道府県、あるいは市町村では、どれくらいの人が命を終えているのか。
まずはそうした統計的な情報から、「死の現在地」を一緒に確認していきましょう。
第2章 年間死亡数とその割合──「1%」が意味すること
近年、日本全国で亡くなる人の数は年々増えています。
たとえば以下のような推移が見られます。
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2010年:119万人(人口約1億2800万人)
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2011〜2012年:125万人
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その後も増加し、直近では130万人以上
つまり、現在の日本では総人口の約1%が毎年亡くなっているのです。これは実に深刻な数字です。
第3章 地域で異なる死亡率:宮城県・仙台市を例に
地域ごとに死亡率を見ると、興味深い傾向が見えてきます。
宮城県
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一般的には全国平均と同程度(約1%)
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ただし2011年は1.47%と突出して高く、これは東日本大震災の影響です
仙台市
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都市部ではさらに死亡率が低く、**0.7%〜0.78%**程度
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理由は、比較的若年層が多く住む都市構成にあると考えられます
人口の年齢構成が、死亡率に大きく関係していることがわかります。
第4章 死者の増加と「高齢化する死」
厚生労働省が発表している明治以降の統計によれば、日本の死亡数は右肩上がりで増加中です。
予測によれば、2040年には年間160万人が死亡するとされています。
医療の進歩によって「すぐには死なない社会」が実現しましたが、
それでも寿命には限界があります。つまり、日本は今まさに**「多死社会」**へと突入しているのです。
第5章 変化する「死に方」──子どもの死から高齢者の死へ
1920年頃の統計を見ると、死者の36.4%が4歳以下の子どもでした。
当時は乳幼児死亡率が非常に高く、「生まれてもすぐに死ぬ」ことが一般的だったのです。
それが現在(2015年)では、死亡者の60%が80歳以上。
この約100年の間に、日本人の死に方は劇的に変わったのです。
● 1956年:初めて「80歳以上の死者」が「5歳未満の死者」を上回る
● 大正時代の常識:「老少不定」──若くても老いていても、死は突然訪れる
● 現代の傾向:「高齢期にやってくる死」が標準化
この変化の背後には、医療技術の進歩があるのは間違いありません。
第6章 人口動態から見える未来──自然減と新たな社会構造
現在の日本では、死亡数が出生数を上回る自然減少が続いています。
加えて、結婚件数の微減、それに伴う出生数の減少も見られ、
このままでは人口構成のバランスが崩れていくことは避けられません。
超高齢化・多死社会という新しいフェーズにおいて、私たちの社会は、
「どう死を迎えるか」だけでなく、「死をどう支えるか」にも向き合う必要が出てきています。
第7章 まとめ:死が語る「時代のかたち」
本日のまとめとして、以下の点が重要です。
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死亡者数の絶対数が増えている
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死亡する年齢層が大きく変化した
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背景には医療技術の進歩と人口構成の変化がある
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かつて「死は突然」だったが、いまや「死は老いの先」にある
このように、死は私たちの社会構造や生き方と密接に関わっています。
終わりに:死を知ることは、生を知ること
「死」は誰にとっても避けられないテーマです。
だからこそ、統計や歴史の視点から「死のかたち」を知ることは、
同時に「どう生きるか」を考える手がかりになるのではないでしょうか。
次回は、この統計的な死の現実が、どのように制度や文化に反映されてきたのかを考えていきましょう。
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