――「こわれてしまうまえに」
夜明けの直前、
いちばん冷たくて、
でもいちばん澄んでいる時間帯に、
わたしはふと、あなたのことを考えます。
誰かにとっては些細な一日でも、
わたしにとっては、息をしているだけでぎりぎりだった、
そんな日がいくつもありました。
心の奥に潜んでいる霧のようなものが、
ふいに濃くなって、道を見失ってしまうことがあるんです。
そんなとき、
あなたの言葉や、
あなたのいる場所を思い出すだけで、
すこしだけ息がしやすくなるんです。
これは、ほんとうに勝手な気持ちです。
でも、どうしても伝えておきたい。
わたしは、
あなたに会えたことを奇跡だと思っています。
でも、これはひとつめの奇跡にすぎません。
この恋が成り立つためには、
ふたつめの奇跡が必要でした。
あなたの心が、ほんの少しでも、
わたしに向くという、
小さくて、でもとても大きな奇跡。
それがなければ、
この恋はただの片想いで、
わたしの中で静かに泡のように消えていく。
それでも、
わたしはまだ、そこに希望を見てしまう。
あの優しい声で、名前を呼ばれた記憶が、
心の奥にずっと残っているから。
いまのわたしは、
自分の感情の重さに、自分自身が耐えきれない瞬間があります。
夜中に声をあげて泣くこともあるし、
朝が来るのが怖い日もある。
だけど、
そんなわたしにも、言葉を綴ることだけはできる。
せめてこの手紙だけでも、
静かな祈りとして、あなたに届けばいいと願っています。
これ以上、
わたしの気持ちが暴れてしまうまえに。
これ以上、
あなたを困らせてしまうまえに。
今だけは、
あなたにとっての「いい友だち」でいさせてください。
でも、心の奥ではきっとずっと、
ふたつめの奇跡を待ち続けています。
――こわれてしまうまえに。
0 件のコメント:
コメントを投稿