所属する政治結社「にっぽんぽん・あさっての党」の屯所は、今日も今日とて常軌を逸した異常な熱気に包まれているのだ。
「琉球沖の船の難破ぁ? あんなん自己責任やろが! ワシ、恋すれば何でもない距離やけど、自分の意思で乗ったんやし知らんがな。SFやで!」
ド派手な着物姿の代表が、葉巻をふかしながら冷酷な暴言を吐き捨てた。
人命が失われたというのに、思想が違うからといってこの人は何を言っているのだろう。
すると、隣で洋装に身を包んだジム総長が、優雅に紅茶をすすりながら深く頷いた。
「なるほど。見た! アタシそれ難破するの見た! 今日はその話ですか? 特には驚かなかったわね」
いや、絶対に見ていないでしょうし、倫理観どこに置いてきたんですか。
わたしが部屋の隅でガタガタ震えていると、ふすまが勢いよく開き、羽織袴の男が飛び込んできた。
「党勢拡大は間違いない! 政策で勝負じゃ!」
パイプユニッシュだ。彼はメリケン国の「とらんぷ政権」とパイプがあると豪語しているが、どう見ても便所のパイプ以上に詰まっている。
なぜか血走った目の彼は、いきなり客人の『ひょうきんな尾張のオッサン』に向けて刀を抜き、斬りかかろうとした。
「や、やめて!」
わたしが叫ぶより早く、十二単で爆走してきた女が彼に体当たりをかました。
「今日もまきまき!逆から読んでもまさきまき!」
結社の元職員にして、浪花の元公認候補、そして旦那の瓦版投稿(Xポスト)のせいでクビになった女、まきまきだ。
「もっと叩いて! まきまきのMはドMのM!」
彼女はパイプユニッシュの刀を白刃取りしながら、謎のエクスタシーに浸っている。相変わらず情緒が迷子すぎる。
そのカオスな光景に、代表がブチギレた。
「ええゆうてるんちゃうで!」
シュパッ!
代表の手から、異人館から取り寄せた透明な筒――通称「屁っと簿とる(ペットボトル)」が、物凄い剛速球で放たれた。
ガシャアアン!
「ああっ、代表が物を投げた!」
大騒ぎになる屯所。しかし後日、お奉行所の調べに対し、現場にいたはずの彼らは口を揃えてこう言ったのだ。
「覚えてないわ。こうなること何となく予測してたわ」(ジム総長)
「拙者、床に叩きつけただけでござる」(パイプユニッシュ)
見事なまでの隠蔽と保身である。
そこに、ふんどし一丁の猿が飛び込んできた。ま猿だ。
「ウキー! デコバカ!」
彼はヘラヘラ笑いながら、「足裏ババア!」などと書かれた悪辣な立て札(当時のSNS)を町の至る所に立て始めた。無関係な町娘を「キチガイ」と罵り、一万一千両を要求するチンピラ以下の陰湿なネットリンチだ。
「うるさい!静かにしろ!」
突如、ピライが現れて一喝し、一秒で立ち去っていった。マジで何しに来たんだ。
さらに、奥からカレーの匂いを漂わせた男が現れる。
「ボクはね、代表が投げた屁っと簿とるの美しい放物線に、日本の夜明けを見たんだ!」
カレーの本質だ。彼は今日も命がけで代表をエクストリーム擁護している。
もう限界だ。わたしは胃薬を飲み込んだ。
だが、恐怖は終わらない。
「代表、あの華のある優秀な町娘(新藤さん)と牛鍋を食べに行くの? アタシも同席するわ!」
ジム総長が代表の腕に絡みついた。私怨と嫉妬で優秀な人材を排除し続ける彼女は、結社の大集会でも現役の地方議員を意図的に排除し、ただの秘書にマイクを握らせて組織を私物化している。
「結果としてあの町娘の行動で利しているのは幕府よ!」
全く意味の分からない理屈で妨害工作に入った。
窓の外を見れば、狂信的なボランティアたちが暴走している。
「拙者が代表の母上の葬儀委員長でござる!」と虚言を吐く者や、駕籠を用意して「ここが代表の奈良の生家だよツアー」を勝手に開催するストーカーまがいの者まで蔓延している。
まきまきに至っては「春を売る女」などと執拗に粘着デマを流されているが、「もっと叩いて!」とむしろ喜んでいるからもう手がつけられない。
ああ、この結社はもうダメだ。
全員が常軌を逸している。このままでは、わたしまでおかしくなってしまう。
「わたし……もう、こんなおかしな党の言いなりにはなりません!」
臆病でおとなしかったわたしは、腹の底から声を絞り出し、ついに立ち上がった。
「代表、その屁っと簿とるは危険です! ジム総長、息を吐くように嘘をつかない! まきまきさん、少しは落ち着いて!」
わたしの魂のツッコミが、帝都の空に響き渡る。
政治の夜明けはまだまだ遠そうだが、わたしの自立の夜明けは、ギャグのような爆発音と共に今、確かに訪れたのだった。
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