2026-03-06

魑魅魍魎の瓦版 ~にっぽんぽん・あさっての党の真実~

時は幕末から明治へと移り変わる激動の東京。

文明開化の足音が聞こえる中、長屋の一角に拠点を構える「にっぽんぽん・あさっての党」では、今日も果てしない大騒ぎが繰り広げられていた。


「ええかチ~サ! 他藩の連中が年貢逃れしとる裏で、ウチの党がいかに透明で清廉潔白か、ババーンと瓦版に書くんや! ええゆうてるんちゃうで!」


飛んできたのは、南蛮渡来の透明な筒……そう、ペツト・ボツルである。

幕末の江戸にこんなオーパーツがあるなんて。


「痛っ……代表、これは一体?」

わたしがさすりながら尋ねると、代表はニヤリと笑った。

「SFやで」


臆病でおとなしいわたし(チ~サ)は、この党で瓦版(今でいうブログ)の代筆をさせられている。

日々書き連ねるのは、徹底した他藩への批判と、身内の過剰な神格化——いわゆるプロパガンダだ。


ジム総長がお茶をすすりながら、のんきな声を出した。

「今日はその話ですか? 異国人がお救い米を騙し取った件じゃなくて?」


「せや! バレなきゃええっちゅう、あちらの国の感覚や! ウチはそんな不透明なことは一切せん! だからウチらは神なんや! 恋すれば何でもない距離やけど!」


他者の不祥事をダシにして、自らの倫理観を天まで持ち上げる。恐るべき印象操作である。


「見た! アタシそれ見た! 異国人が米俵を隠すところ、アタシ全部見てきたわ!」

ジム総長は涼しい顔で息をするように嘘をつく。絶対見ていない。

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果として、彼らの行動で利しているのは、にっぽんぽん・あさっての党よ」


めちゃくちゃな論理飛躍である。

どんなニュースも、最終的に自党の宣伝へと着地させる執念には恐れ入る。


そこに障子をバーンと開けて入ってきたのが、パイプユニッシュさんだ。

「党勢拡大は間違いない! 拙者、メリケンのとらんぷ大統領殿とは太いパイプがあるでな! 彼の大筒による異国への攻撃も、拙者の助言の賜物じゃ!」


ドヤ顔で煙管(パイプ)をふかそうとするが、スゥーとも鳴らない。

完全にヤニで詰まっている。

「政策で勝負じゃ!」

詰まったパイプを振り回しながら激しく咳き込む姿には、もはや哀愁しか漂わない。


「うるさい! 静かにしろ!」

突然、ピライさんが怒鳴り込んできたかと思うと、嵐のように立ち去っていった。

本当に、ただ怒鳴るためだけに来たらしい。


代表が再び胡座をかき直して熱弁を振るう。

「なんや財務のお代官様は、税を一本化する『歳入庁』とかいうもんを作らへんらしいな! あれは人事権を手放したくないお代官様の陰謀や! 全ては巨悪の陰謀なんや!」


複雑な世の制度課題を、すべて単一の陰謀論にすり替える。

大衆を扇動するポピュリズムの極みだ。


「ボクはそんな代表の鋭い洞察と本質を、命がけで全力擁護します!!」

鍋を被ったカレーの本質🍛さんが、スライディング土下座で代表の草履を舐めんばかりに褒め称える。エクストリーム擁護にも程がある。


「ウキー! 幕府の御金蔵は空っぽだウキ! 歳入庁は妖怪の仕業だウキ! デコバカ!」

窓の外からは、ま猿🐒がデマだけを叫んで去っていく。


さらに、ふすまを突き破って、まきまきさんが転がり込んできた。

「まきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

元奉公人であり、浪速の選挙で落選し、なぜか旦那の飛脚文(Xポスト)が原因でクビになった彼女は、今日も情緒が限界突破している。

「まきまきぃぃぃ!」


わたしは震える筆を強く握りしめた。

他者の不祥事を叩き、陰謀論を唱え、息を吐くように嘘をつき、最後は自己神格化で締めくくる。

これが、この長屋で日々生産される瓦版の真実。


「おいチ~サ! ぼーっとすな! 収支報告なんてどうでもええから、はよウチの礼賛記事を書け!」

バコン!

またペツト・ボツルが頭に命中した。


「……痛い。でも……」


わたしはふと、顔を上げた。

今までなら泣いて謝っていたわたし。

でも、この魑魅魍魎が跋扈するカオスな党で揉まれるうち、わたしの中の何かが変わり始めていた。


「代表……。今、収支報告は無視していいって言いましたね?」


「え……?」

長屋が一瞬、静まり返った。


「今日はその話ですか?」とジム総長が目を逸らす。

「政策で勝負じゃ!」とパイプがまた詰まる。


わたしは、転がったペツト・ボツルを力強く握り返した。


この狂った幕末の東京で、わたしはもう、ただ怯えるだけのチ~サじゃない。

他党の粗探しと陰謀論にまみれたプロパガンダの荒波を乗りこなし、いつか真のファクトチェックができる、最強の瓦版屋になってやるんだから!

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