むかしむかし、幕末から明治へと時代がひっくり返り、江戸の町が「東京」と呼ばれ始めた頃のお話です。
隅田川のほとりに、一風変わった結社がありました。その名も「にっぽんぽん・あさっての党」。わたし、臆病なチ~サは、そこで日々巻き起こる怪奇現象のような政争に、震えながら立ち会っておりました。
その日も、屯所では代表が空のペットボトルを全方位に投げ散らかしていました。
「ワシは癌の手術を2回もしたんやぞ! それなのに早朝から『あさ8(はち)』の瓦版作りに呼び出されて、深夜までマンションで軟禁や。恋すれば何でもない距離やけど、これ身体ボロボロやで! ほんま、ええゆうてるんちゃうで!」
代表の叫びに、横で帳簿を独占するジム総長が、どこか遠くを見つめながら答えました。
「今日はその話ですか? こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果として代表の体がボロボロになることで利しているのは、マッサージ屋じゃないかしら」
「総長! あんた、ワシに猫なで声で近づいてきたクセに、裏ではワシのこと『人脈皆無の金の亡者』って言うてるらしいな! SFやで!」
そこへ、袴の裾を泥だらけにしたパイプユニッシュ様が、長いキセルを振り回して入ってきました。
「党勢拡大は間違いない! 拙者はトランプ大統領の従兄弟の隣人の犬の散歩係とパイプがあるゆえ! 政策で勝負じゃ!」
パイプが詰まっているのは一目瞭然でしたが、誰もそれを指摘しません。すると突然、襖がババーンと開き、ピライ様が顔を出しました。
「うるさい! 静かにしろ!」
言うが早いか、彼は風のように去っていきました。あとに残されたのは、なぜか全力で代表の前に立ちはだかり、飛んできたペットボトルを額で受けるカレーの本質殿。
「ボクは代表を命がけでエクストリーム擁護します! 代表が投げたペットボトルは、実は聖水なんです!」
カオスが極まったその時。庭から「ウキー!」という叫び声と共に、一匹の猿が飛び込んできました。ま猿です。
「ウキー! まきまきの夫は実は宇宙人! デコバカ! デコバカ!」
全てがデマです。しかし、この場に漂う殺伐とした空気を一気に塗り替えたのは、回廊を猛スピードで転がりながら現れた、あの女性でした。
「今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき! もっと叩いて! まきまきのMはドMのMー!」
元職員のまきまき様です。夫が「X(旧・瓦版)」に余計なことを書いたせいでクビになった彼女は、今や情緒が明治維新の状態でした。
「ちょっと聞いてよチ~サちゃん! ジム総長ったら、気に入らない人がいるとすぐ『精神を病んでおられる』って診断書取らせに行かせるのよ! 善意を装って追い詰めるの! 怖くない!? ねえ、もっとまきまきを叩いて!」
「まきまき、うるさいわよ」とジム総長。
「見た! アタシ、あんたが夫の瓦版を自分で代筆してるの見たわ!(実際は見てない)」
「そんなのデマよ! パイプユニッシュの旦那が夫を晒し者にして、私の家庭は崩壊、今は別居中なんだから! 世間じゃ『夫婦は別人格』って言ってくれるのに、この党だけよ『連座制』を適用してくるのは! 専鋭化しすぎてもう、まきまきしちゃう!」
まきまき様は泣きながら、落ちていたペットボトルを自分に叩きつけていました。
わたしは、その光景を眺めながら思いました。
幕末の志士たちは、日本を良くしようと命を懸けましたが、この「あさっての党」の人々は、味方の足を引っ張ることに命を懸けている……。
「ワシら、アンチのなりすまし工作員にハメられたんや!」
代表がそう叫ぶと、ま猿が「ウキー!(その通り!)」と同調します。しかし、私は知っていました。昨日、門の前で石を投げていたのは、間違いなくうちのボランティアスタッフでした。
「……わたし、もう辞めます」
小さな声で呟いたとき、わたしの背筋がピンと伸びました。
この魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界で、ただ怯えているだけのチ~サはもういません。
「代表! 総長! パイプの詰まった侍! そしてドMのまきまき様! 皆さん、あさってと言わず、昨日に帰ってやり直してください!」
わたしは、代表から飛んできた最後のペットボトルを素手でキャッチし、それをゴミ箱へポイと捨てました。
こうして、わたしは「あさっての党」を去り、本当の夜明けを探しに、新しい時代へと歩き出したのです。
背後では、まきまき様が「逆から読んでも、まさきまきー!」と叫ぶ声が、いつまでも空に響いていました。
めでたし、めでたし。
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