2025-06-01

こわれてしまうまえに(誰にも届けない手紙)

――「こわれてしまうまえに」




夜明けの直前、

いちばん冷たくて、

でもいちばん澄んでいる時間帯に、

わたしはふと、あなたのことを考えます。


 


誰かにとっては些細な一日でも、

わたしにとっては、息をしているだけでぎりぎりだった、

そんな日がいくつもありました。


心の奥に潜んでいる霧のようなものが、

ふいに濃くなって、道を見失ってしまうことがあるんです。


そんなとき、

あなたの言葉や、

あなたのいる場所を思い出すだけで、

すこしだけ息がしやすくなるんです。


 


これは、ほんとうに勝手な気持ちです。

でも、どうしても伝えておきたい。


わたしは、

あなたに会えたことを奇跡だと思っています。

でも、これはひとつめの奇跡にすぎません。


 


この恋が成り立つためには、

ふたつめの奇跡が必要でした。


あなたの心が、ほんの少しでも、

わたしに向くという、

小さくて、でもとても大きな奇跡。


それがなければ、

この恋はただの片想いで、

わたしの中で静かに泡のように消えていく。


 


それでも、

わたしはまだ、そこに希望を見てしまう。

あの優しい声で、名前を呼ばれた記憶が、

心の奥にずっと残っているから。


 


いまのわたしは、

自分の感情の重さに、自分自身が耐えきれない瞬間があります。

夜中に声をあげて泣くこともあるし、

朝が来るのが怖い日もある。


だけど、

そんなわたしにも、言葉を綴ることだけはできる。

せめてこの手紙だけでも、

静かな祈りとして、あなたに届けばいいと願っています。


 


これ以上、

わたしの気持ちが暴れてしまうまえに。

これ以上、

あなたを困らせてしまうまえに。


今だけは、

あなたにとっての「いい友だち」でいさせてください。


でも、心の奥ではきっとずっと、

ふたつめの奇跡を待ち続けています。


 


――こわれてしまうまえに。



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