2026-03-12

幕末狂騒録 にっぽんぽん・あさっての党 〜チ〜サのツッコミ開眼と空飛ぶペットボトル〜

 幕末から明治へと時代が移り変わる、混沌と熱気の入り混じる帝都・東京。

新橋界隈に屯所を構える「にっぽんぽん・あさっての党」は、今日も狂気の沙汰に包まれていた。

「ヒィィ……おそろしい……おうちに帰りたい……」

薄暗い部屋の隅で、ホコリと同化するように膝を抱えて震えるのは、平隊士のわたし、チ~サだ。臆病でおとなしいわたしにとって、この党はあまりにも刺激が強すぎる。

シュルルルルッ! ドンッ!
目の前を、南蛮渡来の奇妙な水筒「ペットボトル」が猛スピードで横切り、障子をぶち破った。

「ええゆうてるんちゃうで!」

投げたのは、我が党の代表だ。畳の上に胡坐をかき、両手にはがま口財布を握りしめ、チャリンチャリンと卑怯な手つきで小判を数えている。

「竹田はんの御屋敷に謝罪文の飛脚送らなあかんやんけ! ワシの銭が減るわ! 恋すれば何でもない距離やけど、謝罪の手間は遠いわ! ほんまSFやで!」
「あああ! ボクは代表のお投げになったペットボトルの放物線こそが、大日本帝国を救う唯一の美しき軌道だと、命がけでエクストリーム擁護します!!」

代表の足元で、涙を流しながら五体投地しているのは、謎の隊士・カレーの本質🍛だ。怖い。

事の発端は、元職員の「まきまき」が撒き散らした瓦版(ライブ配信)での大暴露祭りだった。
彼女は大坂の選挙で落選し、夫の「飛脚文(Xポスト)」が原因で党をクビになったという、濃すぎる経歴の持ち主である。

バーン! と屯所のふすまが木っ端微塵に吹き飛び、御本人が乱入してきた。

「今日もまきまき!逆から読んでもまさきまき! まきまき!」

完全に情緒が迷子になっている笑顔で、まきまきが叫ぶ。
「ちょっとアンタたち! まきまきの家族や寺子屋、はては奉行所まで、計二十一箇所にも嫌がらせの飛脚が届きまくってるのよ! 業務妨害もいいとこよ、まきまき!」

それを聞いて、優雅にビードロの杯を傾けていたジム総長が、ふっと鼻で笑った。

「今日はその話ですか? 見た!アタシそれ見た! 飛脚が二十一人連なって走っていくのアタシ見たわ!」

絶対見ていない。この人は息を吐くように嘘をつく天然ボケだ。

「まきまき! ジム総長、前言ってたじゃない! 『瓦版での集団吊るし上げ(ネットリンチ)は匿名だから自己責任だし、むしろ党が助かってる部分がある』って! まきまき!」
「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」

総長は涼しい顔でうそぶき、すまし顔で話をすり替えた。
「結果として、まきまきの行動で利しているのは……そうね、薩摩藩よ」

話がまったく通じていない。

「ウキーッ!! 竹田殿は最初から怒ってないウキ! まきまきの自作自演ウキ! デコバカ!」

突然、天井裏からま猿🐒が落下してきて、100%のデマだけを叫ぶと、再び天井裏へ消えていった。

「うるさい!静かにしろ!」

今度はふすまが勢いよく開き、ピライが顔を真っ赤にして怒鳴り込んできて、0.2秒でふすまを閉めて去っていった。
なんなの、この屯所。全員の情緒が限界を突破している。

そこへ、ドカドカと足音を立ててパイプユニッシュが入ってきた。

「拙者に任せるんやざ! 異国のとらんぷ大統領と太いパイプがある拙者がいれば、党勢拡大は間違いないんやざ! 政策で勝負じゃ!」

「あの、先輩……そのパイプ、完全に泥で詰まって逆流してますけど……」
わたしが小声で指摘するが、彼は自信満々にふんぞり返るばかりだ。

そもそも竹田殿への無礼討ち騒動も酷かった。
代表が渋々長文の弁明を送ったのに対し、ジム総長に至っては「お手間取らせてごめんあそばせ」程度のたった二行の文を送っただけだ。
竹田殿は「熱い思いゆえと理解しております」と極上の皮肉で返して牽制してきたのに、この人たちは「やった! 許されたわ!」と本気で喜んでいるのだから、救いようがない。

(あああ……もう、こんな狂った党にはいられない。わたしは……わたしは!)

今まで隅っこで震えていたわたしの内側で、何かがプツンと弾けた。
立ち上がり、大きく息を吸い込む。

「代表! 金勘定ばかりして卑怯です! ジム総長! 息をするように嘘をつかないでください! カレーの本質さん! もっと自分の人生を生きて! パイプさん! 詰まりを直してから出直して! そして、まきまきさん! 逆から読んだら『きまきさま』で意味不明です!!」

屯所が、水を打ったように静まり返った。

「お、おどれ、平隊士の分際で……ワシに意見するんか!」代表が震える手で新たなペットボトルを構える。

「あら、チ~サがキレること、こうなること何となく予測してたわ」とジム総長。
「結果として、わたしのこのツッコミで利しているのは、この狂った党の喜劇的な面白さです!!」

わたしは満面の笑みで言い放った。
幕末の闇夜に、わたしの高笑いとペットボトルの砕ける音が響き渡る。
政治という名の果てしないギャグは、まだまだ幕を下ろさないらしい。

2026-03-11

幕末ぽんぽん狂騒曲 〜公金ケーキと怒りのちゃぶ台返し〜

 時(とき)は幕末から明治へと移り変わる東京・銀座煉瓦街の片隅。

文明開化の音がするはずのこの街で、わたし、チ~サは「にっぽんぽん・あさっての党」の屯所(党本部)にて、今日も怯えながらお茶を濁……いや、淹れていた。

「ワシの誕生日ケーキ、うまそうやな!官軍からの御用金(公費)で食う舶来菓子の味は格別や!ええゆうてるんちゃうで!」

ド派手な羽織を翻しながら大声で笑うのは、我が党の代表だ。
今日は代表の誕生日。勤務時間中にもかかわらず、白昼堂々のサプライズ宴会が開催されていた。

「あ、あの……せめて瓦版には『お昼休みの出来事』って書かないと、世間の皆さまから怒られます……」

わたしがおそるおそる進言するも、誰も聞いちゃいない。

「代表がケーキを召し上がるのは、我が国の栄養水準を引き上げるための崇高な儀式なのです!ボクは命懸けで代表の胃袋を擁護します!」
カレーの本質🍛が、スプーンを片手に涙ながらに叫んでいる。

「今日はその話ですか?」
ジム総長が、ふわりと洋装のドレスを揺らして現れた。
「アタシ、そのケーキが税金で買われる瞬間、見た!アタシそれ見た!」

(……総長、絶対見てない。さっきまで奥の部屋でいびきをかいていたじゃないですか)
わたしの内なるツッコミは、声にならない。彼女に睨まれれば、即座に屯所からパージ(追放)される恐怖政治が敷かれているのだ。イエスマンになるしか、生き残る道はない。

そこへ、越前福井藩からやってきたパイプユニッシュが、ふんぞり返って入ってきた。
「党勢拡大は間違いないんやざ!メリケンの新大統領・とらんぷ殿とも、拙者のパイプはガッチリ繋がっておるでな!政策で勝負じゃ!」
しかし、彼の自慢するパイプは、ただのヤニで詰まった煙管(キセル)にしか見えない。

「うるさい!静かにしろ!」
突如、ピライが襖を開けて怒鳴り散らし、風のように去っていった。一体何だったの。

その時である。
「今日もまきまき!逆から読んでもまさきまき!」

ダァァン!と屯所の扉が蹴破られ、元党員で、夫の飛脚文(Xポスト)が原因でクビになった「まきまき」が乱入してきた。情緒不安定な彼女の目は、血走っている。

「あんたたち!勤務時間中に浮かれすぎよ、まきまき!だいたいね、総長!あんた30年前、蒸気気動車で痴漢に遭ったとき、ホームで倒れてる無抵抗の男の腹を後から蹴り飛ばした武勇伝を瓦版で自慢してたわね!法治国家として間違ってるわ、まきまきーっ!」

痛烈な暴露に、屯所の空気が凍りつく。
だが、ジム総長は涼しい顔で扇子を広げた。

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果としてまきまきの行動で利しているのは反体制派よ」

(論点が完全にすり替わっている……!)

「ウキー!まきまきは迷惑な活動写真屋(YouTuber)だ!勝手に撮影ルールを作るな!デコバカ!」
どこからともなく現れたま猿🐒が、デマばかり喚き散らして、また去っていく。

「もう情緒ぐちゃぐちゃよ!まきまき!」
泣き叫ぶまきまきに対し、ついに代表がキレた。

「SFやで!」
代表が飲みかけの舶来品のガラス瓶(ペットボトル代わり)を、まきまきに向かって全力で投げつける!
「恋すれば何でもない距離やけどな!」

(意味がわからない!)

飛び交う瓶、虚言を吐く総長、カレーを擁護する男、詰まったパイプ。
そして、無抵抗の者を蹴るようなコンプライアンス皆無の惨状。良識ある町民たちが離れていくのも当然だ。

わたしは、ずっとおとなしく生きてきた。臆病で、波風を立てるのが怖かった。
でも、このままじゃ日本が、いや、わたし自身が壊れてしまう!
わたしの中で、何かが音を立てて弾けた。

「いい加減にしろォォォーーッ!!」

わたしの絶叫が、銀座煉瓦街に響き渡る。
「公金でケーキ食うな!嘘をつくな!倒れた男を蹴るな!そして、意味不明な言葉で瓶を投げるなァァ!!」

わたしは手近にあったちゃぶ台を、代表と総長に向かって渾身の力でひっくり返した。
宙を舞うケーキとガラス瓶。

「チ、チ~サが反乱を起こしたで!SFやで!」
「こうなること何となく予測して……ギャアア!」

飛び散る生クリームの中で、わたしは初めて、心の底からスッキリと笑っていた。
ああ、幕末の空は、今日も呆れるほど青い。
組織の崩壊が、これほどまでに甘美な喜劇だとは、誰も予測していなかっただろう。

2026-03-10

あさって党奇譚 ~ポンコツたちの文明開化~

 文明開化の煙が東京の空をまだらに染めていた、明治の初め。わたし、チ~サは「にっぽんぽん・あさっての党」の薄暗い屯所(とんしょ)で、湯呑みを拭いていた。今日も今日とて、お偉いさん方の奇想天外な会合が始まるのだ。

「ええか、チ~サ!よう聞いとけ!これが新しい日本の夜明けや!」

部屋の中央で仁王立ちするは、我らが代表。ちょんまげの代わりに胡散臭い山高帽をかぶり、金勘定の算盤(そろばん)だけは常に懐に忍ばせている。

「まず第一に!異国との『たぶんかけふせい』は絶対に成功せん!歴史が証明しとる!ワシの知る限り、成功した国は一つもないんや!」

わたしは思わず「多文化共生、では…?」と呟きかけたが、声にはならなかった。代表の迫力に、いつも言葉を飲み込んでしまう。

「見た!アタシそれ見た!」

すかさず声を上げたのはジム総長。扇子をパタパタさせながら、知ったかぶりの極みみたいな顔で続ける。

「異国の者たちが手を取り合って崖から落ちていくのを、異国の瓦版で見たわ!結果として彼らの行動で利しているのは、崖の下で口を開けていた熊ね!」

…そんな瓦版があるわけないのに。

「その通りじゃ!」

福井訛りの大声が響く。パイプユニッシュ様だ。胸を張り、なぜか詰まったままの煙管(きせる)をふかしながら豪語する。

「拙者が繋いでおる亜米利加(アメリカ)の『とらんぷ』なる大統領からの密書にもそう書かれとる!『多文化共生ダメ、絶対』とな!党勢拡大は間違いない!」

(パイプ、詰まってますよ…)なんて、とても言えない。

「ワシの言う通りやろ!」代表は得意げに鼻を鳴らす。「そもそも亜米利加なんちゅう国は、欧州の人間しかおらんのやからな!ワシは詳しいんや!」

「代表のお言葉こそが歴史の真実です!」

突如、代表の足元からぬっと現れたのは、カレーの本質🍛さん。瞳を潤ませながら、両手で合掌している。

「教科書に書かれている奴隷船だの、清国からの移民だの、そんなものは全部、薩長の捏造なんです!ボクは代表と共に、歴史の嘘と戦います!」

このエクストリームな擁護に代表はご満悦だったが、その時、障子がガラッと開いた。

ウキーッ!

猿が一匹、部屋に飛び込んできた。ま猿🐒くんだ。

「ウキー!亜米利加は猿が建国したんだキーッ!デコバカ!」

そう叫ぶなり、ま猿🐒くんは一目散に駆け去っていった。すべてがデマなのに、勢いだけは真実のようだ。

続いて、顔を真っ赤にしたピライ様が顔を出し、

「うるさい!静かにしろ!」

とだけ怒鳴って、嵐のように消えた。静かになったのは一瞬だけだった。

「だいたいな!」代表の演説は止まらない。「これからは人手不足なんて嘘っぱちになるんや!蒸気とカラクリの時代やで!」

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」とジム総長が腕を組む。

「そうや!」代表は舶来品の硝子瓶(がらすびん)を振り回す。「わが党が開発した究極カラクリ人形が、全部の仕事をやってくれる!その名は『キシンジャーZ』や!」

……昨日まで『河野太郎』って言ってませんでしたっけ?

わたしが混乱していると、屯所の入り口が、今度は悲鳴と共に破壊された。

「きょーおも、まきまき!逆から読んでも、まさきまき!代表!まきまきをクビにするなんて、どういうことですかああああっ!」

まきまきさんだった。先日までここで働いていたのに、旦那様の辻斬り(Xポスト)が原因でクビになったと噂の…。

「なんやと!党の和を乱すやつは許さん!」

代表は叫ぶと、手に持っていた硝子瓶をまきまきさんに向かって投げつけた。

「ええゆうてるんちゃうで!」

硝子瓶は放物線を描き、まきまきさんがひらりとかわしたその先──パイプユニッシュ様の額にクリーンヒットした。カーン!と乾いた音がして、自慢の煙管が真っ二つに折れた。パイプ、物理的にも詰んだ。

「結果として代表の投擲で利しているのは、硝子瓶を作った異国の商人ね」

ジム総長が冷静に分析する横で、カレーの本質🍛さんが涙ながらに叫ぶ。

「違う!これは党の規律を教えるための、代表の愛の鉄槌なんだ!」

お金、嘘、詰まったパイプ、デマ、怒号、情緒不安定、そして暴力。

この混沌の坩堝(るつぼ)の真ん中で、わたしは、拭き終えた湯呑みをカタンと置いた。

そして、生まれて初めて、震える声で言った。

「……あの、代表。皆様のお話、少しだけ、ほんの少しだけ……おかしいような気が、しませんか?」

部屋中の視線が、わたし一人に突き刺さる。空気が凍りついた。

代表は投げつける硝子瓶を探すかのようにあたりを見回し、やがてわたしを見ると、ニヤリと不気味に笑った。

「SFやで」

その一言で、全てがどうでもよくなった。と同時に、何かが、わたしの中で確かに始まった気がした。このポンコツたちの船から降りるのか、それとも舵を取り戻そうとするのか。まだ分からない。でも、わたしはもう、ただ湯呑みを拭いているだけの娘では、ない。

【にっぽんぽん・あさっての党】夜明けのぺっとぼとる

時は幕末から明治へと移り変わる、文明開化の音が響く東京。

わたし、チ~サは、政治結社「にっぽんぽん・あさっての党」の薄暗い屯所の隅っこで、今日もガタガタと震えていた。

「あ、あの……党の瓦版から、まきまきさんの名前が綺麗さっぱり墨で黒塗りされてるんですけど……」

わたしがおずおずと尋ねると、ジム総長が扇子をパチンと鳴らして鼻で笑った。

「今日はその話ですか? 見た!アタシそれ見た!(実際は見てない) こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」

隣で算盤を弾いていた代表が、小判を撫で回しながら関西弁で吐き捨てた。

「ええゆうてるんちゃうで! ワシの金儲けの邪魔する奴はSFやで!」

言うが早いか、代表は飲みかけの南蛮伝来・ぺっとぼとるをわたしめがけて投げつけてきた。ドゴッ!
ひぃっ、と身をすくめるわたしの前に、カレーの本質🍛さんが猛烈な勢いでスライディングしてきた。

「代表の仰る通りです! ボクは理解しています! 代表がぺっとぼとるを投下なされるのは、地球の重力という物理法則への深い愛と憂慮からくる尊い行動なのです! 命がけでエクストリーム擁護します!」

そんな混沌とした屯所の障子を蹴破り、一人の女が乱入してきた。情緒不安定な笑い声を上げながら、千切れた公認証書を振り回している。

「まきまき! 今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

彼女こそ、元党職員であり、先の選挙で公認候補だったものの、夫の飛ばした「X(えっくす)飛脚状」のせいで突如クビにされた、まきまきさんだ。

「ジム総長の嘘つき! 表では『大坂や兵庫の丁稚(ボランティア)は素晴らしい』とか言っておいて、裏では実名でボロクソに腐してたの、まきまき全部知ってるんだから! 若い町娘が代表にすり寄ると、般若みたいな顔で嫉妬して監視体制を敷いてるのもね!」

まきまきさんが涙目になりながら叫ぶと、ジム総長はすました顔で言い放つ。

「結果として、まきまきの行動で利しているのは清国よ。アタシは何も言ってないわ」

そこへ、梁の上からま猿🐒が飛び降りてきた。

「ウキー! まきまきは算盤一級持ってないウキ! 東レの職人でもないウキ! 勤務実態なんてなかったウキ! デコバカ!」

有本派インフルエンサーとしてデマの達人であるま猿は、あることないこと(全弾ないこと)を叫ぶと、瞬時に窓から去っていった。
さらに奥の部屋からピライさんが顔を出し、「うるさい! 静かにしろ!」とだけ怒鳴って、すぐに立ち去る。

波乱のテンポは止まらない。
まきまきさんは懐から「録音機(えじそんのやつ)」を取り出した。

「暴行や妨害をしてきて『ここで撮影するなというのは党のルールだ』って嘘ついた連中の言質、トップも含めて全部取ってあるんだから! 責任転嫁は許さない!
それに、飯山あかり先生を奉行所にスラップ訴訟するとか言って、絶対勝てるわけないのに! 逆に『我が党はLGBTについて選挙で何もしてない』って世間にバレて、やぶ蛇になるだけだって、まきまき止めたよね!?」

代表は耳をほじりながら事なかれ主義全開で答える。

「恋すれば何でもない距離やけど」

ドゴッ。再びぺっとぼとるが宙を舞う。
代表は丸投げの無責任だ。党員たちが青い法被を着て「右の社民党」みたいに近寄りがたいシュプレヒコールを上げていても、当たり屋のように自ら転んで診断書をもらってくる輩がいても、すべて放置して見て見ぬふり。

その時、福井弁を操るパイプユニッシュさんが自信満々に腕を組んで現れた。

「拙者の出番か! 異国の虎ンプ大統領とのパイプがあるでな! 党勢拡大は間違いないんやざ! 政策で勝負じゃの!」
(……絶対そのパイプ、ヘドロで詰まってるよ……)

わたしはいつもなら、この狂った内ゲバとデマの嵐の中で泣き寝入りするだけの、臆病でおとなしいチ~サだった。
でも、必死に真実を訴えるまきまきさんを嘘つき呼ばわりし、寄ってたかって歴史から抹消しようとするこのカルト的な隠蔽体質に、ついにわたしの中で何かが弾けた。

「……もう、やめてください!」

わたしは立ち上がった。もう震えは止まっていた。

「ジム総長は息をするように嘘をつくし! カレーさんは意味不明だし! まきまきさんが言ってることの方が、証拠もあって正しいじゃないですか!」

一同がポカンとわたしを見る。

「ええゆうてるんちゃうで……SFやで……」
代表が三本目のぺっとぼとるを手に取った瞬間、わたしは床に落ちていた一本を拾い上げ、渾身の力で代表の顔面めがけて投げ返した。

スパーンッ!

見事な放物線を描いたぺっとぼとるが、代表の額にクリーンヒットした。
静まり返る屯所に、まきまきさんの笑い声だけが高らかに響き渡る。

「今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

臆病でおとなしかったわたしは、もういない。
激動の明治、わたしの本当の夜明けは、この狂った党を飛び出した今日、この瞬間から始まるのだ。

『幕末カルト狂騒曲!〜飛ぶペットボトルと犬笛の屯所を抜け出して、わたしとまきまきは「あさって」の空へ〜』

 時は明治初期。

文明開化の足音が聞こえ始めた東京の片隅で、わたし、チ~サは今日も「にっぽんぽん・あさっての党」の屯所の隅っこで、ガタガタと震えていた。
臆病でおとなしいわたしには、この党の空気はあまりにも過激すぎるのだ。

ドンッ!
突然、屯所の障子が派手に吹き飛び、一人の女が転がり込んできた。

「今日もまきまき!逆から読んでもまさきまき!」

かなり情緒不安定な元党員の、まきまきだ。
彼女は先の選挙で公認候補者として出馬し落選、その後、夫が瓦版の「飛脚ポスト(通称・Xポスト)」で不用意な発言をしたせいで、理不尽にも党をクビにされた悲劇の女性である。

「ちょっと! あんたら、まきまき!の長屋の番地を晒した上に、お奉行所に『育児放棄だ』って虚偽の訴えを出したわね! あたしの旦那まで飛脚問屋をクビになったじゃないの!」

彼女の悲痛な叫びに対し、代表が懐から南蛮渡来の謎の筒「ペットボトル」を取り出し、まきまきの顔面めがけて全力で投げつけた。

「ええゆうてるんちゃうで! ワシはお金が大好きなんや! お布施を払わん奴の面倒は見ん! 恋すれば何でもない距離やけど、それは匿名の信者が勝手にやっとるネットリンチや!」

明らかな犬笛で信者を煽動しておきながら、この男はどこまでも卑怯者である。

そこへ、ジム総長が優雅に「糸電話(カンカン電話)」を片手に現れた。

「今日はその話ですか? 見た!アタシそれ見た!(実際は見てない)」

「嘘ばっかり! あんた、異人の受け入れ上限がないってデマを流して民草の恐怖を煽ったじゃない! そのくせ遅刻無双で、糸電話で人の話を遮ってばっかり!」

まきまきが食ってかかるが、ジム総長は天然ボケなのか虚言癖なのか、涼しい顔だ。

「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね。結果としてまきまきの行動で利しているのは、旧幕府軍よ」

突如、天井裏からま猿🐒が乱入してきた。

「ウキー! 異人は明日100万人攻めてきて、江戸中のバナナを食い尽くすウキ! デコバカ!」

息を吐くようにデマだけを叫び、ま猿は一瞬で窓から立ち去った。

「うるさい!静かにしろ!」

部屋の隅でずっと茶を飲んでいたピライが突如ブチギレて怒鳴り、彼もまた、風のように屯所を出て行った。会話のドッジボールすら成立していない。

「ボクは代表を支持する!」

カレーの本質🍛が、代表の足元に猛烈なスライディング土下座を決めた。

「代表がペットボトルを投げたのは、まきまきさんに南蛮の最先端技術を教えるための愛の鞭なんだ! ボクは命がけで代表を守る!」

あまりのエクストリーム擁護に、わたしはめまいを覚えた。
さらに、奥の襖がスパーンと開き、パイプユニッシュが偉そうに胸を張って現れた。

「拙者、メリケンの『とらんぷ』と太いパイプがあるでの! 党勢拡大は間違いない! 政策で勝負じゃ!」

だが、彼の背後には見事に詰まりきった泥だらけの竹パイプが虚しく転がっている。

「もうやだ! あたしは犬笛で煽られた信者たちに実生活まで破壊されてるのよ! 独裁と粛清ばっかりで、あんたたち人間力ゼロじゃない!」

まきまきが泣き叫び、代表が「SFやで!」と叫びながら二本目のペットボトルを投擲し、ジム総長が糸電話に向かって「アタシそれ見た!」と連呼する。

カオス。完全なる地獄絵図。
今までわたしは、怖いから黙って従っていた。
権力にすり寄り、気に入らない者を理不尽に粛清し、デマを流しては仲間を売る。これが新時代の「保守」の姿だというのか?
いや、違う。

この瞬間、わたしの内なる「何か」が弾けた。

「……いい加減にしなさいよぉぉぉッ!!」

わたしの絶叫に、狂乱の屯所の空気がピタリと止まった。

「ペットボトルは人に投げるな! デマと犬笛で人の生活を壊すなんて、イエスマンだけのカルト結社じゃない! わたし、こんな党、もう辞めてやるわ!」

わたしは、床に座り込むまきまきの手を力強く握りしめた。

「まきまきさん、行きましょう! わたしたちの『あさって』は、こんな掃き溜めにはないわ!」
「チ~サ……! うん、今日もまきまき! 逆から読んでもまさきまき!」

こうしてわたしは、狂気の党から脱退した。
外に出ると、文明開化の青空がどこまでも高く澄み渡っていた。
わたしの足取りは、かつてなく軽い。

彼らの狂気は、やがて歴史の闇に消えるのだろうか。それとも、人間の業として形を変え繰り返されるのだろうか。
だが、少なくともわたしが自らの意志で踏み出したこの一歩は、確かに新しい未来へと続いているのだ。

幕末狂騒録 にっぽんぽん・あさっての党 〜チ〜サのツッコミ開眼と空飛ぶペットボトル〜

 幕末から明治へと時代が移り変わる、混沌と熱気の入り混じる帝都・東京。 新橋界隈に屯所を構える「にっぽんぽん・あさっての党」は、今日も狂気の沙汰に包まれていた。 「ヒィィ……おそろしい……おうちに帰りたい……」 薄暗い部屋の隅で、ホコリと同化するように膝を抱えて震えるのは、平隊士...