2025-09-11

イスラエルの歩み:2006年から2025年8月まで

 




イスラエルの歩み:2006年から2025年8月まで

第二次インティファーダの余波がまだ街角に残る2006年、イスラエルは新たな時代の入り口に立っていた。ガザ撤退を終えたばかりの国は、和平の座標軸を失い、内政の右傾化と地域の不安定化の波に揺れていた。この約20年は、戦争と停戦、成長と分断、希望と絶望が交錯する、濃密な時間だった。

2006年〜2008年:戦後の検証と北の火種

2006年、イスラエルはヒズボラとの第二次レバノン戦争に突入する。この戦争は、軍の準備不足と戦略の混乱を露呈し、国内ではオルメルト政権への批判が高まった。戦後の検証は、軍改革と安全保障ドクトリンの見直しを促す一方で、政治の信頼を大きく損なった。

同時期、ガザではハマスが選挙で勝利し、ファタハとの対立が激化。2007年にはガザが事実上ハマスの支配下に入り、イスラエルは封鎖政策を開始。この封鎖は、以後のすべてのガザ戦争の背景となる。

2009年〜2012年:右派の台頭と和平の停滞

2009年、ベンヤミン・ネタニヤフが首相に復帰。彼の政権は、安全保障を最優先に掲げ、和平交渉よりも抑止力の強化に傾斜した。入植地の拡大、パレスチナ国家承認への反対、イラン核開発への警戒が政策の中心となる。

この時期、ガザではロケット攻撃が続き、イスラエルは精密空爆で応酬。和平プロセスは停滞し、国際社会の批判が高まる中、イスラエルは「孤立感」と「自衛の正当性」の間で揺れる。

2013年〜2016年:戦争の反復と地域秩序の崩壊

2014年、ガザで再び大規模戦闘が勃発。イスラエルは「防衛の刃」作戦を展開し、トンネル網の破壊とロケット発射拠点への攻撃を行う。民間人の犠牲が増え、国際世論は厳しさを増す。

一方、北ではシリア内戦が激化し、イランとヒズボラの前方展開が進む。イスラエルはシリア領内での空爆を繰り返し、「影の戦争」が常態化する。ロシアの介入により、北線の軍事行動は複雑化し、外交的調整が不可欠となる。

2017年〜2019年:エルサレムの転回と湾岸との接近

2017年、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定。この決定はパレスチナ側の反発を招き、国際社会でも賛否が分かれる。イスラエル国内では歓迎の声が多く、右派の支持がさらに強まる。

同時期、湾岸諸国との静かな接近が始まる。イランへの共通の警戒感が、イスラエルとUAE・バーレーンなどの協力を促進。外交の地図が、少しずつ塗り替えられていく。

2020年〜2022年:コロナと選挙、そしてアブラハム合意

コロナ禍の中、イスラエルは政治的混乱に陥る。3年半で5回の総選挙が行われ、政権は流動化。ネタニヤフの退陣と復帰を繰り返す中、国民の分断は深まる。

2020年、アブラハム合意が成立。UAE・バーレーン・モロッコ・スーダンとの関係正常化は、経済・安全保障の新たな扉を開く。イスラエルはハイテク・防衛・観光分野で急成長し、地域秩序の再編が現実のものとなる。

しかし、2021年には再びガザで戦闘が勃発。エルサレムの緊張が引き金となり、ロケットと空爆が飛び交う。和平の夢は遠のき、封鎖と暴力のスパイラルが続く。

2023年:司法改革と戦争の再来

2023年、ネタニヤフ政権は司法制度改革を推進。これに対し、全国的な抗議運動が巻き起こり、社会の亀裂が露呈する。軍・経済界・市民がそれぞれの立場から声を上げ、民主主義のあり方が問われる。

10月7日、ハマスが前例のない奇襲を仕掛ける。イスラエルはガザへの大規模作戦を開始し、北線ではヒズボラとの衝突が激化。紅海ではフーシ派が民間船を攻撃し、三正面の危機が現実化する。

2024年:国際法と戦争の交錯

2024年、国際刑事裁判所(ICC)がイスラエル首相とハマス指導者に対する逮捕状を発表。国際人道法を巡る議論が激化し、国連・ICJも関与を深める。イスラエルは「自衛の権利」と「国際法の制約」の間で苦悩する。

ガザでは停戦交渉が進むが、人質・被拘束者・人道支援・統治の問題が絡み、合意は難航。レバノン南部ではイスラエル軍が駐留を続け、緊張は続く。

2025年(〜8月):イランとの直接対峙と未来への問い

2025年6月、イスラエルはイランの核・軍事施設への大規模攻撃を実施。イランは報復を宣言し、ホルムズ海峡の不安定化が世界経済に波紋を広げる。原油価格の高騰、海運の混乱、サプライチェーンの遅延——戦争の影響は国境を越えて広がる。

国内では、停戦と復興、統治と正統性を巡る議論が続く。パレスチナ自治政府の復帰、国際機関の関与、アラブ諸国の支援——いずれも政治的費用が高く、住民の信頼を得るには時間がかかる。


結びに:切れない輪を

この20年、イスラエルは安全保障の要請と人道の尊重の間で揺れ続けた。抑止は必要で、比例性も不可欠。アブラハム合意が示したのは「上からの和解」の可能性であり、ガザが突きつけるのは「下からの正統性」の問いだった。

戦争は終わらせるべきものだが、終わらせるには想像力と技術と政治が要る。停戦、統治、人道、復興、そして尊厳。どれか一つでも欠ければ、輪はまた切れる。だからこそ、今度こそ切れない輪を。


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