【ギャグ日本昔話小説】あさって維新伝・TOKYO混乱編
時は幕末から明治へと移り変わる、混沌とした東京の片隅。
わたし、チ~サは、昨日入ったばかりの政党「にっぽんぽん・あさっての党」のあばら家のような党本部で、膝を抱えて震えていた。
「わたし、本当にここでやっていけるのかな……」
土間では、関西弁の代表が火鉢にあたりながら、そろばんで何かを計算している。
「ええか、チ~サ。今の時代、大事なんは思想ちゃう。銭や。銭儲けの匂いがせえへん奴は信用したらあかんで」
そう言って、なぜか懐から取り出したペットボトルをわたしの足元に放ってきた。危ない。
「代表!素晴らしいお考えです!ボク、命を懸けて代表のそのそろばんをお守りします!」
カレーの本質🍛さんが、なぜか槍を構えて代表の背後を固めている。エクストリームすぎる。
そのとき、ふすまがスパン!と威勢よく開いた。
「党勢拡大は間違いない! 拙者の米国(アメリカ)とのパイプを使えば、こんなあばら家ともおさらばじゃ!」
福井弁のパイプユニッシュさんが、胸を張って叫ぶ。でも、その自慢のパイプはいつも詰まっていて、アメリカどころか隣の宿場町とも繋がったことがないらしい。
すると突然、別の障子がガラッと開き、ピライさんが顔を出す。
「うるさい!静かにしろ!」
怒鳴るだけ怒鳴って、嵐のように去っていった。何しに来たんだろう……。
カオスな党本部に、さらに一匹の猿が天井から現れる。
「デコバカ!」
ま猿🐒さんだ。彼は代表の禿げ上がった頭を指差して叫ぶと、「代表のペットボトルの中身はただの水らしいキー!」というしょうもないデマを叫びながら、また天井裏に消えていった。
そんな中、紅一点(わたしを除く)のジム総長が、すっくと立ち上がった。
「皆さん、今日はその話ですか? いいでしょう。しつこく言いますけど、聞いてくださいね」
凛とした声が、このカオスな空間を支配する。わたしはゴクリと唾をのんだ。
「昨今、江戸の町を騒がす『しばき隊』なるごろつき集団。彼らの行動を直接バックアップしているのは、左派の浪士たちと、異国の勢力とつながっている者たちです」
ジム総長の話に、みんなが聞き入っている。
「だけど!」
ジム総長の声が一段と大きくなる。
「結果として彼らの行動で利しているのは誰かといえば、薩長閥の役人どもです!」
「ほう、薩長が?」
代表が初めて銭勘定以外で興味を示した。
「ええ。薩長閥にとって、わたしたち『にっぽんぽん・あさっての党』のような勢力は、出てきてもらっては困る。わたしたちの主張が江戸の民に浸透して、彼らの稼ぎ口である『異人さんを呼び込む商い』が成り立たなくなったら困るからです!」
ジム総長の言葉に、わたしは「なるほど…」と感心しかけた。
すると、彼女はビシッと指を突きつけてこう言った。
「そういう意味でですね、しばき隊の皆さん、あなたたちは薩長閥の手先なんですか?と、ここらへんも、しっかり言っていきたいと思います!」
演説が終わると、一瞬の静寂が訪れた。
わたしがその迫力に圧倒されていると、代表が「カチャリ」とそろばんを置いた。
「……わかったで」
代表の目が、銭の形にギラリと光る。
「つまり、その『しばき隊』とやらを動かしてるんは、薩長の役人っちゅうことやな? そして、そいつらは『異人さんビジネス』で大儲けしとる、と」
「ええ、まあ、結果として彼らの行動で利しているのは……」
ジム総長が言いかけた瞬間、代表はガバッと立ち上がった。
「決まりや! 今から薩長閥の屋敷に殴り込みや! ワシらが直接『異人さんビジネス』をぶん捕るんや!」
「えっ!?」
わたしは思わず声を上げた。
「ワシにはわかる! これはSFやで! フィクションみたいに銭が儲かる話や! 恋すれば何でもない距離やけど、金のためならもっと近いわ!」
代表は興奮のあまり、ペットボトルを壁に投げつけ始めた。
カレーの本質🍛さんが、槍をブンブン振り回す。
「代表! 素晴らしいご決断! 斬り込み隊長は、このボクにお任せください!」
パイプユニッシュさんも、詰まっているはずのパイプをなぜか刀のように構えている。
「政策で勝負じゃ! 党勢拡大は間違いない!」
ジム総長は少し戸惑った顔で、
「今日はその話ですか?」
と呟いたかと思うと、すぐにキリッとした表情で、
「こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」
と言い放った。嘘だ、絶対今思いついたはずだ。
「行くで、お前らァ!」
代表の号令一下、カレーの本質🍛さんとパイプユニッシュさんが「「おおーっ!」」と雄叫びをあげ、あばら家の戸を蹴破って飛び出していく。
わたしは、そのあまりに波乱な展開に、ただただ立ち尽くすことしかできなかった。
静まり返った部屋に、わたし一人。
「……わたし、もうダメだ。こんな党、辞めよう」
そう思った、その時だった。
蹴破られた戸の向こうに、夕日に向かって走る代表たちの姿が見えた。
でも、なんだかおかしい。
薩長閥のお屋敷は、確か、西の山手の方角のはず。
なのに、代表たちはなぜか、東の……深川の海に向かって、全力で走っている。
わたしは、自分の心の奥底から、今まで感じたことのない何かがこみ上げてくるのを感じた。
「……わたし、あの人たちを止めないと」
このままじゃ、党がなくなる前に、代表たちが海の藻屑になってしまう。
それは、なんだか、とても……困る。
わたしは、震える足で立ち上がった。
臆病で、おとなしいだけのわたしが、初めて自分の意志で、あのカオスな集団の後を追いかけようとしていた。
これは、わたしが少しだけ成長した、記念すべき第一歩の物語である。
(たぶん)
はい、承知いたしました。プロのギャ-グ文芸作家として、物語の続きからクライマックスまで、一気に書き上げます。
わたしは、あばら家の党本部を飛び出した。
夕暮れの東京を、海に向かって爆走する代表たちの背中を、必死で追いかける。
「待ってください! そっちは海です! 薩長閥のお屋敷は逆ですー!」
わたしの声など露知らず、代表はペットボトルを振り回しながら叫んでいる。
「SFやで! この海の向こうにワシらの未来があるんや!」
「代表! 素晴らしいご慧眼! ボク、この身が朽ち果てても泳ぎきってみせます!」
「政策で勝負じゃ! まずは黒船を乗っ取るのじゃ!」
ダメだ、会話が全く成立していない。というか、話が殴り込みから世界進出にまで飛躍している。
息を切らして走っていると、いつの間にか隣にジム総長が並走していた。
涼しい顔で、まったく息が上がっていない。
「あら、チ~サも来たのね。こうなること何となく予測してたわ。特には驚かなかったわね」
「ジム総長! なんで止めないんですか! あなたの演説が原因ですよ!」
わたしは初めて、目上の人に強く言ってしまった。
ジム総長は少し驚いたようにわたしを見ると、ふっと微笑んだ。
「今日はその話ですか? いいわ。でも見てみなさい、チ~サ。あの人たちのあの姿。結果として、わたしの演説で利しているのは、党の結束力よ」
どこをどう見たら結束しているように見えるんだろう……。
そうこうしているうちに、わたしたちはついに深川の浜辺に到着してしまった。
代表たちは、ザッパンザッパンと打ち寄せる波を前に、仁王立ちになっている。
「ええか! この波の向こうにアメリカがある! パイプユニッシュ、お前の詰まったパイプをワシのこのペットボトルでこじ開けたる! 恋すれば何でもない距離やけど、ワシらの野望に比べたら太平洋なんぞお堀みたいなもんや!」
代表が壮大な勘違いを叫んだ、その時だった。
「見つけたぞ! 『にっぽんぽん・あさっての党』の連中だな!」
砂浜に、いかにもガラが悪そうな男たちがズラリと現れた。
こ、この人たちが「しばき隊」……!
しばき隊のリーダーらしき男が、代表を指さす。
「てめえらか! 俺たちの稼ぎ口である『異人さんビジネス』を邪魔しようって魂胆はわかってんだぞ! 薩長の旦那方から、よーく聞いてるぜ!」
え?
わたしは混乱した。ジム総長の話だと、しばき隊は薩長と敵対しているはずじゃ……。
代表はニヤリと笑う。
「ええゆうてるんちゃうで。邪魔するどころか、ワシらがそのビジネス、丸ごといただくっちゅう話や!」
「なんだと!」
しばき隊が武器を構える。カレーの本質🍛さんとパイプユニッシュさんも応戦しようとする。
一触即発! もうおしまいだ!
その瞬間、別の方向から声がした。
「そこまでだ!」
現れたのは、立派な着物を着た薩長閥の役人たちだった。
役人は、しばき隊と代表たちを交互に見比べて言う。
「お主ら、まとめて御用改めである! 我らが幕府から極秘で請け負っている『異人さんビジネス』の情報を嗅ぎまわる輩は、一網打尽にしてくれる!」
えええ!?
薩長閥は、幕府と繋がってたの!?
もう何が何だか分からない!
さらにカオスは加速する。
どこからともなくピライさんが現れ、
「うるさい! 静かにしろ!」
と、その場にいる全員を一喝して去っていった。すごい、全員に怒鳴りつけた。
天井から、いや、松の木からま猿🐒さんが飛び降りてくる。
「デコバカ! あの役人は偽物だキー!本当は長州藩の回し者で、しばき隊は全員豆腐屋の息子だキー!」
全部デマだ。絶対に。
三つの勢力が睨み合い、浜辺は爆発寸前の緊張感に包まれた。
わたしはもう、腰が抜けて砂浜にへたり込んでしまった。
その、カオスの中心で。
ジム総長が、すうっと息を吸った。
「皆さん、聞いてください」
その声は、不思議と浜辺の隅々まで響き渡った。
「しばき隊は薩長閥に。薩長閥は幕府に。そして、わたしたちは世界に。それぞれがそれぞれの思惑で動いている。見た! アタシそれ全部見た!」
もちろん見てないはずだ。
「しかし!」
ジム総長は、天を指さした。
夜空には、煌々と輝く満月が浮かんでいる。
「結果として、この全ての混乱で利しているのは、あの月です!」
「「「……月?」」」
全員の声がハモった。
代表も、しばき隊も、役人たちも、みんなポカンと口を開けて月を見上げている。
「ええ。月は、わたしたちがこうして地上で争う姿を静かに見下ろし、己の輝きを増すためのエンターテインメントとして消費しているのです! あなたたち、月に利用されているんですよ!」
浜辺に、完璧な沈黙が訪れた。
波の音だけが、やけに大きく聞こえる。
その静寂を破ったのは、代表だった。
彼は、役人が腰に差していた巾着袋が、混乱で砂浜に落ちているのを見逃さなかった。
「SFやで!」
代表は叫ぶと同時に、電光石火の早業でその巾着袋をひったくり、走り出した。
中からチャリン、と小判の音がする。
「ええかお前ら! 月と戦うんは後や! まずは銭やで!」
その声に、カレーの本質🍛さんとパイプユニッシュさんも我に返って代表の後を追う。
しばき隊も、薩長の役人たちも、あっけにとられて動けない。
わたしは、その一部始終を砂浜に座ったまま見ていた。
そして、なぜだか、笑いがこみ上げてきた。
ああ、なんてむちゃくちゃなんだろう。
でも、なんて……。
わたしは、ゆっくりと立ち上がった。
砂を払い、夕日に向かって、いや、今は月に向かって逃げていく仲間たちの後を、今度は呆れながらも、しっかりと自分の足で歩き始めた。
臆病で、おとなしかったわたしは、もういない。
明日、党本部で代表に「あの小判、どうするんですか?」って、ちゃんと聞いてみよう。
そして、もしペットボトルを投げられたら、今度はちゃんと、よけてみせる。
わたしと「にっぽんぽん・あさっての党」の、長くて波乱に満ちた一日は、こうして幕を閉じたのだった。
わたしの政治家としての本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。
(考察の余地:ジム総長の「月が利している」という発言は、本当にただの天然ボケだったのだろうか……?)
0 件のコメント:
コメントを投稿